京都で酒蔵&醸造所見学! 京都の日本酒やビールが楽しめる場所を、現地在住の酒好きライターが紹介

京都で酒蔵&醸造所見学! 京都の日本酒やビールが楽しめる場所を、現地在住の酒好きライターが紹介

はじめましての方ははじめまして! そうでない方はお久しぶりです。ライターの杉村啓です。

醤油やお酒が大好きで、普段は醤油の本を書いたり、お酒の本を書いたり、お酒にまつわる漫画の原作を書いたり、グルメ漫画についての本を書いたりしており、「むむ先生」と呼ばれることもあります。

以前の京都の紅葉記事を読んでくださった方はご存じかと思いますが、あまりに醤油が好き過ぎて「淡口醤油の文化圏に住んでみたい。あと、観光もしたい」という理由で、数年前に千葉から京都へ引っ越しました。京料理をはじめとする食文化や、世界一の観光都市にも選ばれた、さまざまな世界遺産や国宝、重要文化財はもちろん、四季折々の美しい自然を満喫しています。

そして何より、京都は醸造所(※本記事内では調味料は含まず、酒類を醸造する場所のみを指します)がとても多い! 日本酒だけではなく、ビールや洋酒など、さまざまなお酒が造られています。

いいお酒を造るには、いい水が大量に必要です。米や麦など他の原料は買ってきたり運んできたりできても、水を大量に運ぶのは大変なこと。だから、いい水が湧き出るところに醸造所が建てられるのです。京都はもともと水がとてもよく、古くから名水地として知られる伏見をはじめ、多くの酒蔵や醸造所が存在しています。

というわけで今回は、京都旅行の際にぜひ訪れてほしい酒造&醸造所見学のスポットや、京都ならではのお酒が楽しめる飲食店などを紹介します。

最新システムを取り入れつつ、職人技も光る「キンシ正宗」の日本酒

「京都」「お酒」と聞くと、日本酒をイメージする人も多いと思います。日本酒の世界に昔からある「灘の男酒、伏見の女酒」という言葉通り、京都の日本酒はなめらかで口当たりが良く、きめ細かな味わいの銘柄が多いです。

こういった日本酒の口当たりや味わいの決め手になるのが、水の質。伏見という地名はもともと「伏水」と記されていたこともあるほど、伏流水(地下水)がとても豊富なエリアです。京都に来るなら伏見の酒蔵は絶対訪れてほしい! ということで、まずは名水「常磐井の水」から日本酒を作る「キンシ正宗株式会社」を紹介します。

キンシ正宗_新常磐蔵

キンシ正宗は主に「金鵄正宗(きんしまさむね)」という日本酒を造っています。最寄り駅は京阪丹波橋駅、もしくは近鉄丹波橋駅。京都駅から移動する場合は、近鉄線に乗って移動すると便利です。今回訪れた「新常磐蔵」では、一般客の酒蔵見学を実施しています(施設内整備のため2019年12月31日まで中止)。

キンシ正宗_蒸し釜

酒蔵見学の最初に見せてもらったのがこの大きな機械。いわゆる「蒸し釜(上記写真の右に写っている「NO.8100」と書かれたタンク)」です。多くの方がご存じの通り、日本酒はお米から造られており、そのお米は炊くのではなく、こういった蒸し釜などで蒸します。機械を使うとどうしても糠(ぬか)の香りが残ってしまうことが多いのですが、キンシ正宗では温度などをしっかりと管理し、糠臭さを飛ばしています。

キンシ正宗_甑(こしき)

大きな機械を取り入れている一方で、手作業の工程も残っています。例えば、繊細なお酒を造る際は、機械ではなく昔ながらの甑(こしき)でお米を蒸したりもしているとのこと。

キンシ正宗_麹室

また「一麹(いちこうじ)、二酛(にもと)、三造(さんつく)り」という酒造工程の大切さを表す言葉があるように、酒造りで一番大事な工程だともいわれている麹造りは、この専用の「麹室」で行います。しっかりと空調を効かせ、麹が育つために最適な温度を保てるようになっています。

しかし、麹造で最も重要なのは「」です。触れている麹の温度が変わったのを敏感に察知し、すぐに対応しなければいい麹は造れません。温度計などで測りながらでは若干のタイムラグが生じてしまうそうです。

このようにキンシ正宗の酒造りは、手作業と機械の融合が特徴です。手でやった方がいいところはきちんと手でやるし、機械に任せても大丈夫なところは機械で行っています。

さて見学は続きます。その後、見せてもらったのは発酵タンクの管理エリア。職人さんがお互いに姿を見て話せるよう、コミュニケーションを重視したフラットな構造にしているそう。

キンシ正宗_酵母が発酵

キンシ正宗_酵母が発酵

こちらは発酵している「もろみ」。米、米麹、水を酵母が発酵させている、いわゆる「お酒のもと」です。

キンシ正宗_「袋吊り」という「しぼり

この日はたまたま、「袋吊り」という「しぼり」をやっていたので、そこも少し見学。「しぼり」とは、発酵しているもろみを酒粕とお酒(液体)に分離する工程です。最近はヤブタという機械で一気に「しぼり」を行うことも多いですが、袋に入れて自重で分離させるとお酒に余分な力が入らない分、きれいな味わいのお酒になります。

じゃあ全部手作業にすればいいのでは、と思うかもしれませんが、手間暇がかかりますし一日にしぼれる量にも限界があります。一般的には高品質なお酒造りに用いられている手法で、コストがかかる分、どうしても値段に反映されてしまいます。

キンシ正宗_機械(ヤブタ)

こちらがヤブタ。キンシ正宗では手作業(袋吊り)と、機械(ヤブタ)を商品により使い分けています。

キンシ正宗_タイプが違う4種類

一通り施設を見学したあとは、お酒の試飲も。現状の見学コースでは、タイプが違う4種類のお酒が飲み比べられます。器の形状による味の感じ方の違いなども試させてもらいました。できたて特有の、ピチピチした風味がおいしい!

キンシ正宗_常磐井の水

最後に、敷地内にある「常磐井の水」を少しだけ飲ませてもらいました。工場が営業中は常に流れていて、会員(年会費12,000円)になると汲むこともできます。これがやわらかくて口当たりが良くて、おいしい! 料理にも使ってみたい。

個人的な興味もあり、案内いただいた職人さんに京都の水について伺ってみたところ、京都は岩盤が深く、地下水が貯まりやすい構造になっているため(その量なんと琵琶湖の3/4!)、良質の水が採れるそうです。同じ京都でもエリアにより硬度が異なるそうで、京都御所(上京区)のあたりが約40と最も軟水で、伏見は60ほどで中硬水に分類されます。同じ伏見の中でも、西の方は少し硬度が上がるとのこと。ちなみに、冒頭でも触れた灘(兵庫県神戸市)はだいたい110前後といわれているので、そちらと比べるとだいぶやわらかいお水です。

余談ですがキンシ正宗では日本酒だけでなく、「京都町家麦酒『かるおす』」や「京都花街麦酒『まったり』」といったビールも醸しています。ビール工場は堺町二条(中京区)にある「堀野記念館」で製造されており、製造工程の見学はできないものの、試飲などは行っているので、興味があればぜひ!

なお冒頭にも注記しましたが、「新常磐蔵」は施設内整備のため、2019年12月31日までは蔵見学の受付を中止しているとのことなのでご注意ください。

キンシ正宗 新常磐蔵
住所:京都市伏見区新町11丁目337-1
TEL:075-611-5201
見学受付時間:10:00〜11:00、13:00〜16:00 ※蔵見学は7日前までに要予約 土日祝休
公式サイト:http://kinshimasamune.com/?m=about/shintokiwa

工場内にはたった3つのタンク 小さいからこそ生まれるビール「一乗寺ブリュワリー」

続いて紹介するのは、京都のラーメン激戦区として名高い一乗寺(左京区)エリアにある、ビール醸造所「一乗寺ブリュワリー」。2011年にスタートした小規模な醸造所で、いわゆるクラフトビールを造っています。

一乗寺ブリュワリー_工場

白川通沿いにある工場は、一見すると住宅のようにこぢんまりとしていて「工場」らしさはあまりありません。でもよく見ると……

一乗寺ブリュワリー看板

「一乗寺ブリュワリー」の看板があります。一般客に向けた工場見学も積極的に実施しているとのことで、早速見学させてもらいましょう。

一乗寺ブリュワリー_タンク

案内されたのは、タンクが3つある一室(写真に写っている2つのタンクの向かいにもう1つタンクがあります)。ここで「一乗寺ブリュワリー」のビールが製造されています。これだけでビールが造れてしまうの? と、びっくりするかもしれません。でも、造れるんです

ビール造りではまず、麦などの穀物を温水で混ぜた「マッシュ」というもろみのようなものを造ります。ビールだけでなく、すべてのお酒造りには糖分が不可欠で、ビールの場合は麦のでんぷんを糖に分解し溶かしこんだ液体を造る必要があります。そのために行われるのがタンクに66〜67℃のお湯と粉砕した麦芽を入れ、混ぜ合わせる「マッシング(糖化)」という作業。また、この過程で「マッシュ」の一部を加熱・沸騰させ、また戻す「デコクション」を行います。

一乗寺ブリュワリー_タンク

「一乗寺ブリュワリー」のタンクには、その加熱を直火で行うための設備が設置されています。タンクの底がちょっと焦げているのがあるのが写真から分かりますでしょうか。直火での加熱はコントロールが難しく、小規模な醸造所ならではの工程といえそう。

一乗寺ブリュワリー_マッシング

ブリュワー(醸造責任者)さんが持っている棒は、「マッシング」のときの撹拌(かくはん)に使うそう。また「デコクション」の工程を加えることで、ビールの「コク」が強くなります。

大きな工場では機械で撹拌を行うことがほとんどですが、決して生産数が多くない一乗寺ブリュワリーではひたすら手作業。棒やスコップで撹拌し続けてスープを作る豚骨ラーメンを何となく思い出しました。そういえば一乗寺はラーメン激戦区。ここに共通点が……!(勘違いです)

一乗寺ブリュワリー_タンクの底

「マッシング」を終え完成した「マッシュ」は、ろ過し麦汁だけを取り出します。一乗寺ブリュワリーでは、タンクの底にこの網のようなザルのようなものを設置し、ビール粕や麦芽粕を取り除きます。

一乗寺ブリュワリー_ホップ

続いて、ろ過された麦汁を煮沸します。このとき投入するのが、みなさんも耳なじみがあるであろう「ホップ」。現在は生のホップではなく、写真のようにペレット化したものがよく使用されています。ビールの風味や個性を決めるスパイスやハーブなどもここで投入されます。

一乗寺ブリュワリー_プレートクーラー

できあがったスープ(麦汁)は、プレートクーラーという機械で発酵に最適な温度に調整されたのち、酵母を投入して発酵します。

一乗寺ブリュワリー_冷蔵熟成

1週間の発酵ののち、2週間ほど冷蔵庫で寝かせて冷蔵熟成すれば完成です!

一乗寺ブリュワリーでは工場内の3つのタンクを使い一度に200リットルのみ醸造する、超少量生産のスタイルを貫いています。大量生産はできませんが、だからこそ細部まできちんと目を行き届かせることができ、次々と新しいアイデアを取り入れたビールを造ることができるというメリットも。

一乗寺ブリュワリー_麦芽

例えば麦芽でも、何種類かの組み合わせを試したり。工場にはいろんなタイプの麦芽が保管されています。

フレーバーは麦芽以上にもっと多彩で、ゆず、しょうが、甘夏、梅、はちみつ、コーヒー、夏みかんなど、さまざまな素材を使い、次々と新しいビールを生み出しています。

そんな話を聞いていたら、がぜんビールが飲みたく……! なりますが、残念ながら工場見学ではビールが飲めません。というわけで続いては、一乗寺ブリュワリーがプロデュースするビアパブを訪ねてみました。

一乗寺ブリュワリー
住所:京都市左京区一乗寺出口町10-1
TEL:075-702-2002
見学受付時間:10:00〜17:00 日曜休
※工場見学は1日前までに要予約(イベントなどで対応できない日もあり)
※工場が非常に小さいため、6名以上での見学は要相談
公式サイト:http://kyoto-ichijoji-brewery.com/

一乗寺ブリュワリーのビールを味わうなら「ICHI-YA」へ!

ICHI-YA
さて、河原町エリアは錦小路御幸町(中京区)にある「BEER PUB ICHI-YA」にやってきました。

ICHI-YA_ビールメニュー

ICHI-YAにはオーナーが2人おり、そのうちの1人が一乗寺ブリュワリーのオーナーをされているということで、ほぼほぼ一乗寺ブリュワリーの直営店ともいえるお店。ビールはレギュラー6種類、ゲスト3種類の計9種類が提供されています。一乗寺ブリュワリーのビールは常時7種。ゲストビールが何なのかは、店内はもちろん、週1回更新されるWebページでも確認できます。

ICHI-YA_飲み比べセット

早速「飲み比べセット」(180ml×3種・1,250円)を注文してみました。今回は一乗寺ブリュワリーの「ゴールデンエール」「レッドエール」「デストロイエンジェル」の3種類。

ICHI-YA_豆八監修の白味噌豆乳おでん5種盛り

合わせたのは「豆八監修の白味噌豆乳おでん5種盛り」(780円)です。玉子、こんにゃく、大根、餅きんちゃく、牛すじの王道ラインナップ!

ICHI-YA_牛すじ

白味噌豆乳のおでんは、ほんのりと甘く、やさしい味わいです。そこに、「一乗寺ブリュワリー」のビールが、驚くほどよく合います。個人的には、しっかりと味が染み込んだ牛すじと、ホップや麦芽の風味がありつつも口当たりが穏やかなデストロイエンジェルの組み合わせが好みでした。

「ICHI-YA」は、平日でも開店の11:30からビールを楽しめるのがポイント。一乗寺ブリュワリーの見学に行った後にお話を思い出しながらビールを楽しむのも最高ですし、とにかくお昼からおいしいビールを飲みたい! という時に行くのもおすすめです。

BEER PUB ICHI-YA
住所:京都市中京区船屋町384 1F
TEL:075-256-6099
営業時間:11:30〜23:00 無休
公式サイト:http://kyoto-ichijoji-brewery.com/ichiya_news/

キリンビールの社内ベンチャーが町家でビールを醸造「SPRING VALLEY BREWERY京都」

SPRING VALLEY BREWERY京都

京都の台所・錦市場(中京区)からほど近いところにある「SPRING VALLEY BREWERY(スプリングバレーブルワリー)京都」(以下SVB京都)は、キリンビールの社内ベンチャーが手がけるビール醸造所併設のレストランです。東京・代官山、神奈川・横浜に続く3店舗目で、もともとは繊維の問屋だったという築約100年の町家を改装しており、ここだけの限定ビールやフードも提供しています。

SPRING VALLEY BREWERY_築約100年の町家を改装

入って左手には、併設されているビール醸造所のタンクがずらり! タンクをよく見ると「Yanagi(柳馬場通)」「Tomi(富小路通)」など、京都の通りの名前がついています。

SPRING VALLEY BREWERY_ビールの発酵過程を紹介するムービー

残念ながら醸造スペースの中に入っての見学はできないのですが、先ほどの写真のようにレストランからガラス越しに中の様子が見られます。また、店内のモニターにはビールの発酵過程を紹介するムービーが流れており、見学できなくてもビール造りを身近に感じることができます。

SPRING VALLEY BREWERY_京都のど真ん中でビール

ちなみに店外からもビール醸造の様子が見られます。京都のど真ん中でビールを造っている光景を眺めるのは、なんだか不思議な気分。

SPRING VALLEY BREWERY_レストラン

さて店内に戻って、続いてはレストランを紹介。もともとの横長の構造を生かし、1F左手に醸造所、右手にレストランという配置になっています。

SPRING VALLEY BREWERY_中庭

1Fの奥には中庭も! 暖かい日にここで冷えたビールを飲むと気持ちよさそうです。ちなみに寒さに強い外国の方は、冬でもここでビールを飲むことが多いんだとか。2Fはその横長の空間を丸ごと生かし、大人数でのパーティーにも対応できる空間になっています。

なぜ関東にしかなかったSVBを京都に作ったのか尋ねてみると、やはり理由のひとつは「水の良さ」にあったそう。また、「食文化」が優れていることに加えて、しっかりとしたいいものを造ればそれを受け入れてくれる「クラフトマンシップ」の土壌があることも、出店を決めた理由とのことです。

また、キリンビールはかつて京都府向日市にビール工場を構えていたこともあり、会社として京都への思い入れが強かったとも。工場の閉鎖後も京都で何かをやりたいと考えていたところ、たまたまこの物件を紹介され、SVB京都を建てることにしたとのことでした。

そういった並々ならぬ思いを込めてオープンしたこちらでは、SVBの定番クラフトビール6種類と、SVB京都で造られた期間限定のビールが楽しめます。

SPRING VALLEY BREWERY_PAIRING SET

というわけで、早速ビールを注文してみました。まずは6種類のレギュラービールが100mlずつと、それらに合うおいしいおつまみのセット「PAIRING SET」(2,300円)。ビールは写真左から「496」「COPELAND」「Afterdark」「on the cloud」「Daydream」「JAZZBERRY」です。

SPRING VALLEY BREWERY_ビールの風味にあわせたおつまみ

おつまみはビールの風味にあわせて用意されているということで、まあどれも相性が良い!

特に印象的だったのは、「496」と合わせて味わう「肉味噌マカロン」。外はサクサク中はしっとり甘い生地で肉味噌を挟んでいます。ホップの香り高い「496」と合わせると、サクサクしっとり甘くてしょっぱくて旨くて香り高い、みたいな、言葉で羅列するとよく分からなくなるぐらい、いろいろな味がたたみかけてくるのです。今までに味わったことがない感覚で、もちろんおいしい! ぜひとも味わってほしい組み合わせです。

SPRING VALLEY BREWERY_京都YOSANO IPA

もうひとつ注文したのが、SVB京都限定の「京都YOSANO IPA」。京都府北部にある与謝野町で育てられたホップを使ったIPAです。なんでも、日本ビアジャーナリスト協会代表・藤原ヒロユキさんが、ゆかりのある与謝野町で試しにホップを植えてみたところ、とてもおいしいものができたので本格的に栽培するようになったのだとか。

華やかなホップの香りがしっかりとしていて、苦味が少なく、飲み飽きないバランスのとれたIPA。取材ということを忘れてぐいぐい飲んでしまったほど、飲みやすい一杯です。

最後に、SVBで造るビールのこだわりをエグゼクティブディレクターの岸原文顕さんに尋ねたところ「常に驚きのあるビールを造り、裾野を広げていきたい」というお返事が。

ビールが苦手という人は、苦味だったり、香りだったり、さまざまな部分に「苦手」を感じると思います。例えば、苦味が苦手な人には、苦味や酸味や香りのバランスをうまくとり苦味だけを突出して感じさせないようなビールを造れば、おいしいと感じてもらえるかもしれない。それでいて、じっくり味わうと上質な苦味を感じられるようにすれば、ビール通も唸(うな)る。SVBのビールは、そういったビールを目指しているそうです。

一方、個性的なビール造りにも注力しており、2019年の第1弾限定品では昆布ダシを使った「KON-BROWN」をリリースしました。飲むと「あ、昆布だ」と分かるぐらい、しっかりと昆布ダシが効いたブラウンエールです。ちなみに、新作ビールが発表された日は、当日19:00からSVB京都で振る舞いビールがあるそうです。新作をいち早く試飲したいという人は、SVB京都のプレスリリースをチェックしてみては。

SPRING VALLEY BREWERY京都
住所:京都市中京区富小路通錦小路上る高宮町587-2
TEL:075-231-4960
営業時間:11:00〜23:00(LOフード22:00、ドリンク22:30) 年末年始休
公式サイト:https://www.springvalleybrewery.jp/pub/kyoto/

クラフトジンブームの火付け役 「季の美 京都ドライジン」が生まれた「京都蒸溜所」

京都蒸溜所

京都で造られているお酒は日本酒やビールだけではありません。ウイスキーなどの蒸留酒も造られています。中でも特におさえておきたいのが、プレミアムジン「季の美」を造る「京都蒸溜所」です。

ここ数年、日本国内ではいわゆるクラフトジン(プレミアムジン)がブームになっており、そのブームの火付け役といわれているのが季の美です。

京都蒸溜所は、日本でウイスキーの輸入などを行っていたデービッド・クロールさんら3人の創業者により、2016年にジン専門の蒸溜所としてスタートしました。京都に蒸溜所を構えたのは「もともと京都が大好きだった」「クラフトマンシップが根付いている」「ジン造りに欠かせない最良で新鮮なボタニカルが手に入る」という3つの理由から。

ちなみに京都蒸溜所は公式サイト上でバーチャル見学ができ、普段は一般の工場見学を受け付けていません。今回の記事のテーマからはズレてしまうのは重々承知です。しかし、季の美という素晴らしいお酒が京都で生まれていることをぜひ知ってほしい! と思い、取材を申請しましたところ、今回は特別に工場内を案内いただきましたので、その内容をお届けします!

京都蒸溜所_蒸留器

工場に入ってまず目を引くのは、やはりジン造りのメインともいえるこの蒸留器。ピカピカに光る銅のボディがかなり目立ちます。ジンなどの蒸留酒は、アルコール度数の高いスピリッツを、こういった蒸留器で蒸留して造っています。

プレミアムジンでは主に、一回ずつ蒸留を行い原料の味をしっかり出す単式蒸留器(写真中央・丸い窓が一つある方)が使われています。京都蒸溜所でも使っているのは単式とのこと。しかし、その横(写真右・窓がたくさん並んでいる方)には連続式蒸留器も。

「連続式蒸留器も使ってるんですか?」と伺ったところ、「使うかと思って導入したんですが、まだ使っていないんですよ」との回答が。ちなみに、連続式は窓のところで中が区切られており、蒸留されてできた液体が上から下へと流れる間に、下から吹き上がる蒸気によって加熱・気化し、冷やされるという蒸留工程を一段ごとに繰り返すため、その分アルコールの濃度が高く、スッキリとしたお酒ができあがります。連続式を使った京都蒸溜所のジンも飲んでみたい……!

京都蒸溜所_単式蒸留器

工場内にはこんなに小さな単式蒸留器も。小規模で生産し、レシピを確かめるために使用しているそうです。

ここで、もう少し詳しくジンの造り方を説明しましょう。まず、ベースとなるスピリッツにハーブやスパイスなどのボタニカルを加えて浸漬(しんし)させ、エキスを抽出します。その後に行われるのが先ほども触れた「蒸留」で、液体を熱して発生した気体を冷やし、再び液体化させます。なおジンは、ジュニパーベリー(セイヨウネズ)という果実を乾燥させたスパイスの使用が必須で、逆にジュニパーベリーが入っていれば、他にどんな原料を使っても「ジン」になる、自由度の高いお酒なんです。

多くのジンが小麦や大麦、トウモロコシなどをベースとしたスピリッツを使用するなか、京都蒸溜所では米を原料とした高価な「ライススピリッツ」を使用し、ほかにはない深い味わいとなめらかな口当たりを実現しています。またボタニカルには柚子、山椒、木の芽、笹、赤紫蘇、玉露など個性的な11種類の原料を使用しており、その大半が京都産

京都蒸溜所_レモン

こちらは見学中に見せてくれたボタニカルのひとつ、レモン。京都蒸溜所のすぐ近くで作られているものや広島産のものを、農家さんと直接やり取りをして仕入れているのだとか。

なおボタニカルは農作物のため、年によって微妙に風味が異なります。毎年同じ味に仕上げるためには、レシピを微調整しなければならず、そのために先ほど紹介した小さい単式蒸留器を使っているのです。その他、新しいお酒を造り出すときにも使われるそうです。

京都蒸溜所_大小さまざまなタンク

工場内に所狭しと並ぶ大小さまざまなタンクには、11種類のボタニカルを6つのエレメントに分け、別々に浸漬したものが入っています。それぞれ個別に蒸留することで、ボタニカルの風味を生かしたジンが完成します。とても手間暇もコストもかかる方法のため世界的にやっているところは少ないそうですが、こういった丁寧な工程がほかにはない季の美の風味につながっているのです。

京都蒸溜所_ボタニカルの原酒

今回特別に、ボタニカルの原酒を味わわせてもらいました。個性がはっきりしているものや、原酒では風味が微かなものなど、ボタニカルによりさまざま。でも、風味が微かなものでも、それらをブレンドしないと季の美の味わいは完成しないとのこと。ブレンドの奥深さを感じました。

京都蒸溜所_アルコール度数を調整するための水

こちらのタンクには、加水してアルコール度数を調整するための水が入っています。使用する水は、「月の桂」という日本酒を造っている伏見・増田徳兵衛商店(※「徳」および「衛」は旧字)から運ばれてくるもの。季の美のまろやかな口当たりの良さの一部は、伏見の日本酒造りに欠かせないやわらかな水が担っているのです。

そうして出来上がったジンをタンクで寝かせ、味にまとまりを出し、よりまろやかでなめらかな口当たりに仕上げます。

京都蒸溜所_新しいお酒

現在、京都蒸溜所では、さまざまな樽でジンを寝かせ、新しいお酒を造ろうとしているそう。今回見学させてもらったときも、工場のいたるところに樽がありました。今後、どんなジンが生まれるのか楽しみ!

京都蒸溜所
公式サイト:https://kyotodistillery.jp/
蒸溜所バーチャルツアー:https://kyotodistillery.jp/virtualdistillerytour/

京都で季の美のカクテルを楽しむなら「レスカモトゥール バー」

残念ながら京都蒸溜所の工場見学はできませんが、せめて京都で季の美のおいしさを味わってほしい! ということで、創業者の一人・デービッドさんに「季の美のカクテルを楽しむならここ」というバーを教えてもらいました。

レスカモトゥール バー

やってきたのは四条木屋町(下京区)にある「レスカモトゥール バー」。口コミサイトの「外国人に人気の京都スポット」で1位に輝くなど、日本人だけでなく世界中の人が訪れるカクテルバーです。

レスカモトゥール バー_店内

オーナーのクリストフ・ロッシさんは、9歳のときからマジックを始めるなど、マジシャンとしても活躍しており、店内はまるで映画のセットに足を踏み込んだような、不思議な空間が広がっています。

レスカモトゥール バー_KYOTO GARDENS

人気のメニューで京都蒸溜所のデービッドさんも絶賛するのが「KYOTO GARDENS」(1,500円)。クリストフさんが季の美のために生み出したカクテルで、季の美をベースに、ゆずリキュール、抹茶、レモン、卵白、シンプルシロップを使っています。抹茶や季の美の風味をしっかりと感じたあと、後味にレモンとゆずの柑橘系の香りが残り、爽やかな気分にさせてくれます。とっても飲みやすく、リラックス&リフレッシュできる一杯。

「何も合わせずそのまま飲んでほしい」とお話いただいた通り、ここに何か味を加えるのはもったいない、余韻をいつまでも楽しみたいと思えるカクテルでした。

レスカモトゥール バー_何やら透明な容器が…

もうひとつ、おすすめのカクテルがあるとのことですが、あれ、何やら透明な容器が被されています。

レスカモトゥール バー_容器の中にスモークが!

と、何もないのにみるみる容器の中にスモークが立ちこめてきました! 一体どこから!?

レスカモトゥール バー_BOTANICAL CONNECTION

そうして燻されて完成したのが季の美を使ったスモークカクテル「BOTANICAL CONNECTION」(1,800円)。季の美をベースに、日本酒と桜リキュールを加えています。目の前で繰り広げられるマジックに気が取られがちですが、甘みがあるやさしい味わいのマティーニのような風味に、スモークの香ばしさがプラスされており、目だけでなく口ももちろん大満足。

ここだけのオリジナリティ溢れるカクテルが楽しめる、季の美ファンにはたまらないバーでした。

レスカモトゥール バー
住所:京都市下京区西石垣通四条下る斎藤町138-9 2F
TEL:075-708-8511
営業時間:20:00〜2:00 月曜休
公式サイト:https://www.facebook.com/LEscamoteur-1392735951033939/

街に根付く文化と水が、京都ならではのお酒を造る

日本酒のイメージが強い京都ですが、それだけでなくビールやジンなど、多種多様なお酒が造られています。こだわりが強いものや個性的なものが多いのは、京都にしっかりと根付いている「クラフトマンシップ」の影響も大きいでしょう。いいものを造れば、しっかりと評価してくれる。そんな風潮が、新しいお酒造りにチャレンジしたいと思わせるようです。

そして、今回さまざまな酒蔵や醸造所を巡ってみて改めて感じたのは「どのお酒も口当たりがまろやかで、優しい味わいのものが多い」ということ。これはやはり、京都の水の性質が影響しているのでしょう。もし京都のお酒を飲む際には、そんなやさしい口当たりや、水にも注目をしてみると、もっと楽しめると思います。

今回の記事を読んで、京都観光しながらお酒を飲みたい、いろいろなところに見学に行きたいと思った場合は、近鉄京都線がある京都駅周辺か、もしくは京阪電車の沿線に近いところにホテルを取ると便利です。近鉄線なら伏見に一本で行けますし、京阪線なら祇園四条駅で下車すると祇園や河原町にもすぐに行けます。ぜひ、京都のお酒を満喫してください。

文:杉村啓 ……醤油やお酒を愛し、そのおいしさ・楽しさ・奥深さについて広める活動を行うライター。料理漫画研究家でもある。著書に『白熱ビール教室』『白熱洋酒教室』『白熱日本酒教室』(星海社)、『醤油手帖』(河出書房新社)、『グルメ漫画50年史』(星海社新書)ほか。京都在住。

編集:はてな編集部

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