北海道のガイドブックにも載らない秘境「天売島の魅力」
焼尻島に行った際に、どうせなら一緒にまわってみようと訪れた天売島。地名度は焼尻島よりも低く、北海道に住んでいる人でさえ知らない人も少なく無いようです。旅行客が年々増加する日本で各地が招致に力を入れる中、この島では一切そのような雰囲気がなく、当然観光客はほとんどおりません。飲食店は片手に数えるほどで、レンタカーも数台のみ。お土産屋の店主からも一切売る気を感じられず、とにかくマイペースな島「天売島」。数少ない観光客の方はほとんど北海道の方のようで、なおかつ日帰りという中、東京から宿泊をしにやって来た私はちょっとした変人扱い。「なんでこの島に来たの」「こんな島で何をするの」「東京から来たんじゃあ暇でしょう」などと島の人に何度も聞かれたので、島の方が見てくれていると信じ、その問いに答えようと思います。
儲ける気のないマイペースな島民たち
観光客が多いから観光地価格が存在するのか、観光地価格で儲けようという活力があるから観光地になるのか、観光地の物価が高いのは世界共通事項です。需要と供給のバランスを考えると至極当然のことです。しかし前述にもあるように、この島は他と違い、島民たちがマイペースで暖かく、明らかに観光業をビジネスと捉えていません。
例えば島で唯一のレンタカー屋に行くと、金額は30分単位で加算されて行くのに、「おまけで14時からにしておいたよ!」とおばちゃんに言われ、時計を見て見ると13時40分と表示されている。30分単位加算なのに、20分おまけしておばちゃんの優しさに感激します。そして16時に返そうとするも道を間違え16時15分に返したのですが、16時まででいいよとこれまたおまけをしてくれたおばちゃん。いやいや、30分単位加算なのに35分オマケって、優しすぎます。
フェリーターミナルの前にイカしたウニ売り場を発見したので、ウニを頼むことに。
一匹300円のウニは開いても尚勢い良く動き、新鮮そのものです。
肝心な味もこの旅No.1なのではないかと思うほどの感動するほど美味しさでした。
そこでインスタグラムに投稿しようと店のおばちゃんにお店の名前を聞くと「あれ?なんだっけなぁ忘れちゃったよ」と笑いながら言い、もう一人の従業員に「なんだっけ店の名前」と聞く始末。もう一人の従業員の方も「えーそういえばなんだっけ、忘れちゃったよ。そんなこと聞かれないし」とケラケラ笑い出す。2人は長いことこのお店で働くも店の名前など意識したこともなく、覚えていないとのこと。自分のお店の名前が思い出せないなんて面白すぎると3人で爆笑するも、利益云々考えず、自然体で働いて……いや楽しんでいるのだろうなぁと。
些細なことかもしれませんがそんな島民たちが、この島の素晴らしさだと思いますし、この島の素晴らしさがそんな住人たちを作り上げているのだと思うわけです。
贅沢すぎる天売島の海鮮料理
北海道なのだから海鮮が美味しいのは当たり前という意見が飛んできそうですが、果たしてそうでしょうか。北海道の観光客はここ数年で爆発的に増えています。供給量が決まっている場合、需要が増えれば食べ物のコスパが悪くなるのは必然であり、北海道と言えど……と感じる確率は増えているように思います。しかし、天売で食べたものは全てがほっぺたが落ちるほどのものばかりだったのです。
獲れたての活ウニが食べれる炭火海鮮番屋
天売島には片手で数えられるほどの飲食店しかありませんが、中でも人気なお店がこの「炭火海鮮番屋」。
外には海を目の前に食事をすることができるテラス席があり
店内は炭火焼きができる囲炉裏が設置されています。
私はこの後BBQ をする予定があったのでこの日は海老天丼を頼みました。
贅沢な話ですがこっちに来てから刺身ばかり食べていたので、久々に温かいものを頼みたくなったのです。やはり北海道の離島は新鮮な海鮮が豊富なので、どのお店も刺身オンリーという場合が多いです。なのでこういった丼などの料理を出すお店があるのは意外にも重宝できます。
ええ、本当に贅沢な話ですが。
とは言えど、メニューにある「活ウニ 300円」を見たら、やはり私は大好物のウニを頼みたくなってしまいます。
お店の人にオーダーすると「今からとって来ますので10~15分お待ちいただけますか」言われました。そう、まさかのオーダーがきてからとりに行くスタイルだったのです。
これぞ天売島。目の前に海があるからこそできる究極の贅沢です。
焼きウニとほたての上で焼くジンギスカン
天売島は飲食店が少なく、夜遅くまで開いているお店もないのでどの宿も夕食付きとなっています。基本的には海鮮BBQ付きという場合が多いので、天売島スタイルのBBQを気軽に体験することができます。
私は人生で初めて活ウニを焼いて食べました。
「え!勿体無くないですか」と聞くと、「そこら辺にゴロゴロ落ちてるんだから勿体無くなんてないよ」と。
海の幸に感謝しながら食べていると、今度はホタテとエビの最強コンビがやって来て、締めにジンギスカンが運ばれて来ました。ホタテやエビの出汁が染み出た貝殻の上でジンギスカンを焼くのが天売島流なのだとか。
天売島に来たらそんなBBQが出来る宿に泊まりたいですね。
誰もいない静かな大自然を独り占めする
天売島には8月上旬の一番人気シーズンに足を運びました。私はレンタカーを使って、絶景があれば一時停車しつつ島を一周したのですが、出会った観光客は0でした。
しかし、こんなに素晴らしい景色が島中ひたすら続くわけです。
ウクライナの「愛のトンネル」を彷彿するような、自然に囲まれたまっすぐな道や
こんな迷路のような道も
とにかく誰もいないのです。利尻島や礼文島では考えられないことです。本当にのんびり自然を楽しみたい人に、こんなにもうってつけな島は他にないと思います。
行かないとわからない天売島の素晴らしさ
天売島は北海道のガイドブックに特集が無く、驚くことに地図上からでさえ省かれている場合もあるほど観光地という言葉とは無縁の島です。島全体が見どころですが、確かに利尻島の利尻富士や、礼文島の桃岩展望台のように「これ」と言った分かりやすい見所があるわけではないので、本や雑誌などで魅力を伝えるのは難しい島に思います。そこに住んでいる人や、そこで食べるものなどは実際に行って初めてわかることが多いわけです。しかし「THE観光地」を見ていると、こういった素朴な島にも惹かれてしまうわけです。天売島の魅力はまさにそこなのだと思います。
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