「台三線」という道を聞いたことはありますか?台湾を南北に貫く省道(日本でいう国道)の1つで、台北市から南部の屏東県まで続く全長約437kmの幹線道路のことです。なかでも台北市から近い北部は、客家の人々が暮らす無数の郷や自然が残された見どころの多いエリア。英語では“Hakka Romantic Avenue”という名前が付けられています。台北や高雄など、都市観光の次に訪れてみたいデスティネーションとして、アジア各国から注目を集めているエリアなんです。

台三線に縁のある客家(ハッカ)の人々と文化とは?

まずはこの地に縁のある「客家(ハッカ)」について少し説明しておきましょう。ルーツは中国大陸を発祥とした漢民族で、「客」という字の通り、もともと台湾に住んでいた人々ではありません。中国大陸の北部から南部へ、さらに一部の人は18世紀頃に台湾に渡り、桃園県や新竹県に移り住みました。

先住民との衝突を避けるために最初は山間部へ逃れ、だんだん川沿いの平原地帯へと移り、以後200年以上にわたり土地を開墾しながら独自の文化を発展させてきました。ちなみに、台湾の客家料理が比較的濃い味つけで野菜がメインなのは、山間部でつつましく暮らしていたことが関係しています。日本人の口に合うので、中華料理の中でも人気のジャンルなんです。そんな魅惑の客家料理については、改めて別の記事で触れることにします。

ごはんがすすむ庶民の味!台湾の客家料理とは?

台湾の客家料理

今回は台湾の桃園・新竹・苗栗という3つの県をまたいで、客家の郷を中心に巡ってきました。残念ながら「台三線」を走る公共バスはあまり便がよくないので、タクシーをチャーターするかレンタカー、もしくは体力がある方はレンタサイクルで巡るのがおすすめです。

新旧のコラボが面白い!苗栗県はクリエイティブな郷

最初に訪れたのは、苗栗(ミャオリー)県南部の三義(サンイ)郷という地域。豊かな自然が広がる山間の郷です。ここに暮らす人々はクリエイティブな精神に満ち溢れていました。

「卓也小屋」は、辺りに山林の風景が広がる民宿&レストラン。同じ敷地内にある「卓也藍染」では、昔ながらの製法で植物を使った藍染を体験できます。宿泊や食事をしなくても、ふらりと立ち寄れます。

 

卓也藍染
藍染を体験

■卓也藍染
住所:苗栗県三義郷雙潭村崩山下1-9号
電話:037-879198
URL(中国語):https://www.facebook.com/indigo.dyeing.house
※藍染体験の時間は、要問い合わせ

台湾に行ったことがある人は、このキッチュな花柄を目にしたことがあるかもしれません。これは客家花布と呼ばれる台湾の伝統的な柄で、名前の通りもともとは客家人によって作られたもの。鮮やかでレトロな色柄は日本人女性にも人気で、お土産としても喜ばれています。客家の郷・三義では壁にも描かれていました。思わず記念撮影したくなる可愛さ!

客家花布

客家花布

かつて茶畑だった場所に7年前にオープンした「三義芸術村」。三義に100人ほどいる芸術家のうち約10人が制作拠点としてアトリエを構えています。三義は長らく山間部から他の地域へ木材を運ぶルートの通過点だったため、彫刻家が集まるようになりました。今では木彫の町としても知られています。

三義芸術村
三義芸術村

■三義芸術村
「三義芸術村」の入口に「三義木彫博物館」があるので、そちらを目指して行くのが分かりやすい。
住所:苗栗県三義郷廣盛村廣聲新城88号(三義木彫博物館)
URL(三義木彫博物館/英語、中国語):http://wood.mlc.gov.tw/

三義から台北方面へ北上すると、「南庄老街」という小さな町にたどり着きます。こちらもかつて石炭や山からの木材を運んでいたルート上にあった場所。その往来によって人々が集まるようになり、町のメイン通りには13軒の商店があったそうです。そのため「十三間老街」という名前が付けられています。

十三間老街
十三間老街のお店

のどかな町並みが続きますが、最近ではこの雰囲気に惹かれた若い世代が、おしゃれなお店をオープンしています。「芳山農吧」は2人の若きオーナーが営むバー。地元の食材を使ったオリジナリティ溢れるカクテルを作っています。この日は五葉松のカクテルを出してくれました。

芳山農吧を営む2人の若きオーナー

芳山農吧
■芳山農吧
住所:苗栗縣南庄鄉西村中山路140號
電話:0980−890−860
時間:18:00〜26:00
休み:火・水曜※臨時の休みはホームページ(Facebook)で通知
URL(中国語):https://www.facebook.com/FarmersBar2015/

「南庄大戲院」は古い映画館を模した客家料理レストラン。お料理もさることながら、ユニークな外観や内装にも目が奪われます。

南庄大戲院

■南庄大戲院
住所:苗栗県南庄郷西村中山路3巷55号
電話:0912-576216
時間:予約制
休み:月〜金曜※土・日曜と連休のみ営業
URL(中国語):http://www.nanchuang.com.tw/

苗栗県は、昔ながらの生活とクリエイティブな感性が、うまくミックスされている面白さがありました。

客家の文化を通して知る、新竹県のスローライフ

次は北上して新竹(シンチュー)県へ。IT関連の工場や企業が多い沿岸の新竹市は、今や“台湾のシリコンバレー”と呼ばれているほどですが、内陸部には全く違う風景が広がっています。桃園県と並ぶくらい客家人が多く暮らす県でもあるので、苗栗県よりもその文化を色濃く感じることができるでしょう。台三線沿いでは、人々がのんびりと生活する様子を垣間見ることができました。

 

新竹(シンチュー)県

新竹(シンチュー)県

芸術家として活動をする頼唐鴨(ライタンイャ)さんのお宅を訪ねました。実家がこの地にあるという頼さんは長らく台北に暮らしていたそうですが、大自然の素晴らしさを再認識し、田舎暮らしを選んで戻ってきたそうです。10年前から酢を手作りしていた奥さんは、この地で本格的に酢を醸造するようになりました。今では自然発酵で11〜12種類の酢を作っています。

頼唐鴨(ライタンイャ)さん

頼唐鴨(ライタンイャ)さんの酢

新竹県の見どころとして有名なのが客家の古都・北埔(ベイブ)。歩いて回れる小さな町ですが、新幹線の開通後は都市からのアクセスがぐっと良くなったので、週末には観光客も多く訪れます。

印象深かったのが、美味しい中国茶をいただける「水井茶堂」。ノスタルジックな雰囲気ある建物の中で、古い家具に囲まれながらのんびりと過ごせます。

水井茶堂

水井茶堂のお茶

ここでは、客家の伝統的な飲み物・擂茶(レイチャ)作りが体験できます(300元)。擂茶とは雑穀や豆、ゴマなどを茶葉と共にすりつぶし、お湯などで溶いていただくもので、お店や家庭によって材料は様々。健康にも良いといわれています。いただいた擂茶は、ほんのり甘くコクがあってスイーツのようでした。

擂茶(レイチャ)
■水井茶堂
住所:新竹県北埔郷中正路1号
電話:03-580-5122
時間:10:00~18:00
休み:なし

北埔から車で1時間ほどの伝統的な客家三合院「羅屋書院」も訪れました。客家三合院とは、コの字のように三面を囲んで造られている昔の住宅で、今ではあまり残っていないそう。「羅屋書院」は100年以上の歴史をもつ建物で、現在は民宿としても営業しています。中庭で客家の家庭料理をいただきました。

客家三合院「羅屋書院」

客家三合院「羅屋書院」

涼しい風が吹き抜ける心地よい夜でした。近くには広大な田畑が広がっていて、静かで心安らぐ環境です。

■羅屋書院
住所:新竹県関西鎮南山里上南片79号
電話:0910-013315、0935-543780
URL(中国語):http://www.lohouse.com.tw/https://www.facebook.com/LoMuseum

新竹県は美しい油桐の花が咲くことでも有名な地です。4月末から5月にかけて満開になり、白い花が舞い散る様子がまるで雪のように見えることから「5月の雪」とも呼ばれているのだとか!

これが油桐の花。私が訪れたときには舞う様子は見られませんでしたが、つつましく儚げで、とてもきれいでした。

油桐の花

いよいよ客家文化の本元・桃園県へ

客家の文化や暮らしに馴染んできた頃に、桃園(タオユェン)県へ。ここは“客家の本元”とも呼ばれ、台湾の中で最も多くの客家人が暮らす場所。特に龍潭は、昔のままの町並みが完全に保存されている地区なのだとか。

龍潭地区にある古い町「三坑老街」は、かつて水路運航が便利だったため商業が発達した場所。人々は山から流れてきた水を生活用水や灌漑用水にして暮らしていました。

三坑老街

町は永福宮を中心にして曲がりくねったように作られています。このような建物の分布は、客家部落の特色です。

三坑老街

三坑老街

三坑老街

わずか100m足らず、お店は9軒のみ、歩いて10分もあれば全て見終わってしまう小さな町ですが、まるでタイムスリップしたような気分に浸れることでしょう。こういう場所は、ずっと失われないでいてほしいです。

なお、日本と台湾を結ぶ飛行機の多くが発着する台湾桃園国際空港は、ここ桃園県にあります。

■三坑老街

台鉄「中壢」駅から観光バス「台湾好行」の慈湖線に乗り換えて「三坑老街」バス停下車

もっと地図を広げて、知らない台湾に会いに行こう!

今は客家の人々も故郷を離れて都会へ出ていくことが増えているため、それぞれの郷に住む人はだんだん減少傾向にあるそうです。しかし本質を見直し、このようなのんびりとした生活や文化を守りたいという動きが高まっていることも事実。

今回紹介したエリアは、日本ではまだあまり注目されていない場所なので通り過ぎてしまうことがほとんどですが、地図を広げたその先にはまだ見ぬ風景や知らなかった台湾の魅力がたくさん詰まっていました。ぜひ一度、台三線沿いをゆったり巡ってみてはいかがでしょうか。

取材協力:Hakka Affairs Council(http://www.hakka.gov.tw/

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