オーストラリアの先住民アボリジニの聖地であり、ユネスコ世界遺産にも指定されている「ウルル(エアーズロック)-カタ・ジュタ(マウントオルガ)国立公園」。ここは、旅行ガイドブックには必ず掲載されている有名な場所です。またテレビの旅番組でも頻繁に取り上げられます。しかし、写真や映像、絵画で見ることができるウルルや、カタ・ジュタの姿は実物のほんの一部なのです。これは、この聖地の持ち主であるアナング族の伝統を政府が尊重し、彼らの聖地が写真や映像に映らないよう、厳しい規制を設けているためです。その例を、いくつかご紹介します。

撮影が許可されていないウルル

ウルルの近くまで行くと、聖地を表す「S」の看板が沢山立っています。そこは撮影禁止となっており、メディアを通して見ることはありません。どの場所が、どのような聖地なのか気になりますが、それはアナング族の間にだけ口頭で伝えられることなので私たちは知ることができません。聖地や伝説には、女性だけに伝えられるものや、男性にだけ伝えられるものもあるようです。また、文字にしたり映像にしたりすることは禁じられていますが、直接人から人へ伝えることはできる物語もあるようです。運がよければ、アナング族の人から伝説を聞くことができるかもしれません。

展望エリアから見えない面(北東の面)

展望エリアから見えない面は、ほとんど撮影禁止になっています。しかし、ウルルを一周するように、いくつかのウォーキングコースがあります。マラウォークやベースウォークを歩けば、メディアには出ることのないウルルの姿を見ることができるでしょう。ただし、ベースウォークは10km以上ありますので、暑い日にはお勧めしません。

ムティジュルコミュニティー(居住区)

アナング族の居住区は、関係者以外立ち入り禁止です。アボリジニには、死者の名誉のために、亡くなった人の名前を語らず、写真も残さないという風習があるため、写真や映像を撮られることが好きではない人が多いようです。リゾート内で働く人や、観光に携わる人など、最近ではあまり気にしない人もいるようですが、撮影をしたい時には、本人の了解を得ることがマナーとしてもよいと思います。

登山道、登山をする人の姿がはっきり分かる映像、写真

アナング族は、人々が彼らの聖地であるウルルに登ることを好みません。そこで政府は、登山を推奨するような映像、写真の撮影を禁じています。では、どうして登山禁止にしないのでしょうか? アナング族は、ウルルを訪れる人に登山禁止を強制するのではなく「アナング族の文化を尊重して登らない」と自ら選択して欲しいのだそうです。現実として、滑りやすい岩肌を登るのは簡単なことではありません。今まで何人もの人が命を落としています。

撮影が許可されていないカタ・ジュタ

カタ・ジュタも、ウルルと同様、アナング族の聖地です。しかし、アナングの掟により、部族の一員でない私たちには、伝説の詳細は語られません。

風の谷

風の谷の散策道は、文化的理由により、映像、写真、スケッチなどのアートワークが禁止されています。風の谷を見たい場合は、実際に訪れるしかありません。

カタ・ジュタの3つの岩が一度に映像や写真の中に収まらない場所

カタ・ジュタとは、アボリジニの言葉で「多くの頭」を意味します。名前が表すように、いくつもの岩山で構成されていますが、テレビや書籍で紹介されるのは、3つの岩が並んだ図ばかりです。これは、個々の岩にフォーカスしたり、3つの岩が収まらない角度から撮影したりしてしまうと、聖地が映り込んでしまうためです。

ワルパ渓谷の両側の壁が一度に映像や写真の中に収まらない場所

これも、カタ・ジュタの3つの岩と同じ理由です。両側の壁が収まらない角度で撮影してしまうと、聖地が映り込んでしまうようです。

自分の目で見て、自分の心で感じるウルルとカタ・ジュタ

テレビやインターネットで、どんな情報でも手に取るように分かる現代ですが、文字や写真といった情報を残さず、大切なことを直接人から人へと伝えていくアナング族の文化に触れると、自分の目で見たり、自分の心で感じたりすることの大切さを思い出すような気がします。「重要なできごとがあった所には地面にエネルギーが残されています。アボリジニの人たちは自分たちがこのエネルギーに引きよせられる力があると信じています。」と『エアーズロックの伝説』(Tanami Press)には書かれています。皆さんも、ウルルやカタ・ジュタを、ぜひご自分の足で訪ねて、聖地のエネルギーを感じてみてください。

ウルルのホテルを探す