コーヒー好きなら福岡へ。絶品コーヒーを堪能できる名店めぐり

コーヒー好きなら福岡へ。絶品コーヒーを堪能できる名店めぐり

たびたび雑誌で特集が組まれるほど、全国的に注目されている街・福岡。また、近年のサードウェーブコーヒーブームは福岡にも到来し、新しいコーヒーショップも続々と誕生している。福岡は世界大会などで上位入賞するコーヒーのスペシャリストを多数輩出していることもコーヒー業界では有名な話だ。今回はそんなスペシャリストたちが在籍するコーヒーショップを巡ってみたい。

世界一の焙煎士が在籍するコーヒー豆専門店

コーヒー豆専門店
最初に向かったのは大野城市。福岡市の南東部に隣接するベッドタウンだ。福岡最大の商業地・天神から西鉄電車に揺られること約20分。同市のメインターミナル「白木原(しらきばる)駅」で下車し、踏切を渡って細い路地をてくてく歩いていく。するといきなり真っ赤なポットが出迎えてくれる。ここが1店舗目となる「豆香洞コーヒー」。ここに世界を代表するコーヒーマンがいるのだ。

焙煎士・後藤直紀さん

この方が「豆香洞コーヒー」のオーナー焙煎士・後藤直紀さん。ひょっとしたらすでにご存じという方もいるかも知れない。2013年にフランスで開催された「ワールド・コーヒーロースティング・チャンピオンシップ」の初代チャンピオンであり、現在は「世界一の焙煎士」という肩書きでテレビ番組やCMにも数多く出演し、大手家電メーカーのスマートコーヒーロースター(家庭用コーヒー焙煎機)の開発にも携わっている。店舗に隣接する後藤さん専用の焙煎室でお話を聞いてみた。

焙煎室

後藤さんが豆香洞コーヒーを創業したのがちょうど10年前の2008年。昔からコーヒーが好きで、手網を使ったコーヒー豆の焙煎も趣味でやっていたんだそう。やがて一念発起し、東京の名店「カフェ・バッハ」に師事。焙煎技術やサービスを学んだ。

帰福後は「コーヒー焙煎の煙突が立てられる物件」を探していたところ、現在の白木原の店舗と出会い、この地への出店を決めた。創業5年目までは自らが店頭に立っていたが、「世界一の焙煎士」の称号を得たのを皮切りにコーヒー豆の受注が急増。現在店舗はスタッフに任せ、自らは専用の焙煎室でオランダ製の焙煎機「ギーセン」の前に立ち、日々コーヒー豆の焙煎に明け暮れている。

シックな店内

店舗はコーヒーカラーのブラウンで統一されたシックな雰囲気の空間だ。後藤さんの意志を受け継いだスタッフたちがコーヒー豆の販売や接客を担当する。キリリと引き締まった揃いの濃紺の帽子とエプロンは颯爽とした印象を与えてくれる。

ちなみに豆香洞コーヒーはあくまでも「コーヒー豆専門店」。カフェスペースはあくまでも豆の味を楽しむための「試飲スペース」という位置付けなのだが、「世界一の一杯」を求め、連日多くの来店者でにぎわっている。

スタッフ

カウンター席に座り、コーヒーをオーダーしてみた。スタッフが腰に手を添えながらゆっくりとハンドドリップしてくれる。この手を腰に据える動作はカフェ・バッハのスタイルらしい。師の教えを忠実に守り、さらにスタッフまでにもしっかり教育しているあたり、いかにも真面目な後藤さんらしい。

ホットコーヒー

こちらがホットコーヒー(420円)。スタンダードな中深煎りの「豆香洞ブレンド」は、ちょっぴりほろ苦くも豊かなコクを感じるすっきりとした飲みごたえで、ついもう一杯飲みたくなるような美味しさだ。

後藤さんいわく「おいしいコーヒーを淹れると、そこに人が集まり、小さなカフェになる。お店で飲むコーヒーもおいしいけど、結局自分で淹れるコーヒーが一番おいしいと思うんです。僕はそんな方々のおうちカフェのお手伝いをしていきたい」。そんな思いを抱きながら、今日も後藤さんは焙煎機と向き合う。

豆香洞コーヒー

豆香洞コーヒー
住所:福岡県大野城市白木原3-3-1
電話:092-502-5033
営業時間:11:00〜19:00 ※喫茶は11:00〜18:00(17:30OS)
定休日:水曜日 ※木曜日は豆の販売のみ
http://www.tokado-coffee.com

コーヒーカッピング世界第3位の店長が在籍する老舗コーヒー店

老舗コーヒー店

さて、次に向かったのは大野城市に隣接する太宰府市。太宰府天満宮のお膝元としても有名な街だ。ここに1978年より営業している古いコーヒー店がある。その名は「蘭館(らんかん)」。地元の人にとっては「昔ながらの憩いの場所」という位置付けの店だ。

レトロな雰囲気

店内に一歩足を踏み入れると、そこはまるで時が止まったかのような昔ながらの喫茶店といった雰囲気だ。壁面に掲げられた絵画や、年季の入ったベロア生地のソファー、重厚な木のカウンターなど、至るところで40年という歳月を感じることができる。

店長

この店は田原照淳(てるきよ)さんとお母様の親子2代で営業している。当初はご両親が二人で創業したが、お父様が逝去されて以来、照淳さんが店長となって日々店を切り盛りしている。

コーヒーは昔ながらのネルドリップ方式を採用。照淳さんの蝶ネクタイ姿も昔ながらの喫茶店のマスターといった出で立ちで親しみを感じる。

ウインナーコーヒー

この店の看板メニューがウインナーコーヒー(750円)とタマゴサンド(750円)。ネルドリップしたコーヒーにホイップクリームを浮かべたウインナーコーヒーはカップの縁からクリームとコーヒーを同時にすすりながら飲むのがツウの飲み方。タマゴサンドは甘めの卵焼きをパンで挟み、ケチャップとマヨネーズで味付けしただけのシンプルなもの。されど絶妙に美味しいのだ。その秘密を尋ねたところ、どうやら卵にこだわりが隠されているらしい。

SCAA認定のコーヒー鑑定士

さて、この照淳さんも世界的なコーヒーマンの一人である。九州初のSCAA認定のコーヒー鑑定士の資格を持つ、いわば「コーヒーのソムリエ」。さらにコーヒーの品質の良し悪しを判断する「コーヒーカッピング」の技術に優れ、2011年にオランダで開催されたコーヒーカッピングの世界大会「ワールド・カップテイスターズ・チャンピオンシップ」で世界第3位に輝いた実績をお持ちなのだ。照淳さんは現在も競技会に出場する現役選手であり、大会前は毎日カッピングの練習にいそしむ。

「焙煎やカッピングなど、日頃から毎日やっていることをやっているだけで。普段やっていることが世界に通じるということは、日本のインナーワークのレベルが高いということの裏付けなんでしょうね」。そう涼しい顔で語る照淳さん。しかし、誰よりも日々の技術に磨きをかけているということを関係者は知っている。今日も美味しい一杯をお客様に提供するために、照淳さんはカウンターに立ち続ける。

自家焙煎珈琲 蘭館

自家焙煎珈琲 蘭館
住所:福岡県太宰府市五条1-15-10
電話:092-925-7503
営業時間:10:00〜18:00
定休日:年中無休
http://rankan.jp

オーナーバリスタは世界第2位のラテアーティスト

世界第2位のラテアーティスト

さて、3店舗目となるのは九州随一の繁華街・天神だ。高いビルが立ち並ぶ天神の中心地から、北へ数百メートル歩くと、そこは北天神と呼ばれるエリアだ。あたりにはオフィスビルが立ち並び、同じ天神という地名でも全く異なる表情を見せる。この一角に居を構えるのが「コネクトコーヒー」。店に到着すると、オーナーバリスタの安藤貴裕さんが出迎えてくれた。

コネクトコーヒー

このコネクトコーヒーがオープンしたのは昨年の9月。この場所にはもともと別のカフェが営業しており、「福岡の若手バリスタ達が集まる場所」として有名な店で、もちろん安藤さんも足繁く通っていた。そんな中、その店が急にクローズすることになり、ちょうど独立開業の準備で物件を探していた安藤さんがそのまま居抜きで店を引き受けることになった。

店名の「コネクト」とは「繋げる」という意味を持ち、コーヒーで人と人を繋げることをコンセプトに掲げている。

エスプレッソマシン

カウンターに鎮座するエスプレッソマシンはマルゾッコのストラーダーAV。ブラックとブラウンのカラーリングは内装に合わせてカスタマイズしたそう。マシンの前にはさまざまなラテアート大会のトロフィーがズラリと並んでいる。それもそのはず、安藤さんの得意分野はラテアート。しかも日本を代表するトップラテアーティストなのだ。

ラテアート

安藤さんは、大学時代にカフェ巡りしていたときにコーヒーの奥深さを知り、やがてラテアートに興味を持ったそう。大学卒業後は一旦企業に就職するもののラテアートへの情熱が高まり、わずか一年あまりで退職。

その後、数店舗のカフェやコーヒーショップを渡り歩きながら技術を培い、さまざまなラテアート大会にエントリー。初出場した2013年のラテアート大会では全国8位に入賞。その直後には全国3位になり、翌2014年には初の日本一に。そして同年行われた「Coffee Fest ラテアート世界大会2014」では遂に世界第2位まで上り詰めたのだ。

ラテアート

世界第2位という称号を手にしながらも、安藤さんは常に謙虚だ。誰に対しても人当たりが良く、まさに「その辺にいる感じ良いお兄ちゃん」といった印象なのだ。仲間からも気軽に「アンディ」とあだ名で呼ばれている。そのため、コネクトコーヒー自体の敷居も低く、安藤さんのラテアート見たさにほとんどの来店者が一杯550円のカフェラテをオーダーする。安藤さんもイヤな顔ひとつせず、丁寧にラテアートを描いてくれる。なんとも素晴らしい関係性だ。

完成したラテアート

完成したラテアートがこちら。名付けて「鶴の恩返し」。羽根2枚の間にハートが2つ描かれ、幸せを運ぶ鶴を表現したもの。この素晴らしいラテアートをいとも簡単に描けるのも、やはり日々の練習の賜物らしい。大会前には毎日2時間みっちり練習するそうだ。

取材中にもひっきりなしにお客様が訪れてはカフェラテをオーダーし、完成したラテアートを撮影してはSNSにアップしていた。もはやこの店は北天神のインスタスポットとしても有名になっている。天神の中心部から歩いて10分程度とアクセスも良好なので、天神に来られた際にはぜひこのコネクトコーヒーまで足を運んで、気軽に「ラテアートお願いします」と頼んでみては?

コネクトコーヒー

コネクトコーヒー
住所:福岡市中央区天神5-6-13
電話:092-791-7213
営業時間:12:00-22:00(日・祝11:00-18:00)
定休日:火曜日
https://www.facebook.com/connectcoffee.jp/

世界第2位のオーナーバリスタが経営するカフェ

レックコーヒー県庁東店

そして最後にご紹介するのが、今、福岡で最も勢いのあるコーヒーショップ「レックコーヒー」だ。現在福岡市内に3店舗、東京に1店舗を構え、今年8月には天神に5店舗目をオープンする予定とのこと。今回はグループの旗艦店となっている「レックコーヒー県庁東店」に足を運んでみた。

オーナーバリスタ

このレックコーヒーを率いるのが、レックコレクティブ株式会社の代表取締役であり、オーナーバリスタの岩瀬由和さん。言わずと知れた日本、いや世界を代表するトップバリスタである。

このレックコーヒーのサクセスストーリーは福岡ではあまりにも有名だ。地元・愛知県から共同代表の北添さんと一緒に福岡に移り住み、トラックでコーヒーの移動販売として創業したのが2008年。それから数々のバリスタ競技会に参加し、2014年には岩瀬さんが「ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ(JBC)」で初優勝。翌2015年にアメリカ・シアトルで開催された「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(WBC)」に初出場し世界第7位に入賞。そして2015年の「ジャパン・バリスタ・チャンピオンシップ」では2年連続の優勝を果たし、2016年にアイルランド・ダブリンで開催された「ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ」で見事世界第2位の栄冠に輝いたのだ。

オーナーバリスタ

WBC世界第2位になって以来、現在の岩瀬さんは国内外のバリスタトレーニング、 コーヒーの産地訪問など、ワールドワイドに活動されており、年間の3分の1は日本にいないほど忙しい毎日を過ごされているそうだ。

真剣な表情

「それじゃあ一杯淹れましょうか。エスプレッソでいいですか?」おむもろにエスプレッソマシンに向き合い、エスプレッソの抽出をはじめる岩瀬さん。今までの柔和な笑顔が、マシンを扱いだしたとたんに真剣な表情に変わる。ちなみにこの店で使用しているのは「SYNESSO」社のエスプレッソマシン。シルバーのボディはセクシーさも感じる。

エスプレッソ

世界第2位のトップバリスタである岩瀬さんが直々に抽出したエスプレッソ。もったいなくて飲むのを一瞬ためらいつつも、一気にグイッと飲ませて頂くことに。エスプレッソ特有の苦味の奥に、ほのかな甘さとフルーティーさが感じられ、なんとも美味しい!これで一杯350円とのこと。

県庁東店

さてこの県庁東店、福岡市営地下鉄箱崎線「馬出九大病院前駅」から歩いてすぐの場所にあり、他のレックコーヒー店舗よりも比較的空いているので、ゆったりとした時間を過ごせるのが特長だ。ちなみにこの店には秘密の(?)地下室があり、レックコーヒーの心臓部として稼働中なのだとか。岩瀬さんによると、長年の夢だった自家焙煎も近々スタートするそうで、これからはロースタリーカフェとしてさらに店舗を拡大していく予定なんだそうだ。これからのレックコーヒーの更なる飛躍にも期待したい。

レックコーヒー県庁東店

レックコーヒー県庁東店
住所:福岡市東区馬出1-10-3
電話:092-643-6266
営業時間:8:00〜21:00(土・日・祝は9:00より)
定休日:不定休
https://www.rec-coffee.com

福岡にはこれらの4店舗以外にも素晴らしいコーヒースペシャリストたちが多数存在している。福岡のコーヒー業界の特長として、みんな仲が良いことが挙げられる。店舗間の垣根がなく、お互いの店を行き来し合い、情報や技術の共有を行っている。それは各自が持っている「福岡を日本を代表するコーヒーの街にすること」という共通認識に他ならない。自分の店だけでなく、さまざまな店がスキルアップすることで、より美味しいコーヒーを街全体で提供していく。それはきっと「隣の客は皆友達」という屋台文化が根底にある福岡という街ならではなのかもしれない。

福岡に来たら、観光ついでにいろんなコーヒーショップを巡ってみて欲しい。きっと素晴らしい人と美味しい一杯に出会えるはずだから。

記事執筆:久原茂保

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