函館といったらやっぱり“坂”でしょ!? とことん坂を巡る旅を楽しんできた
突然ですが、皆さん。「函館」といえば何を思い浮かべますか。
日本三大夜景のひとつとして知られるこの夜景ですか?
それとも、これですか?
新政府軍と旧幕府軍が最後に戦った箱館戦争の拠点になったとされる「五稜郭」でしょうか?
これらすべて函館を代表する風景であり観光スポットです。しかし、この写真を見ると「函館らしい」と思う人も多いのではないでしょうか。
そう、坂です! 函館らしい風景として、この坂を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。かくいう私もそのひとりでした。
しかし、函館出身の知人いわく「観光客にはこの坂ばかり注目されるけど、ほかにも坂があることを知ってほしい」とのこと。聞けば、函館にはこの坂以外に名前がついた坂が18本もあり、しかもそれぞれの坂の名前の由来や歴史もあるのだとか。
函館で夜景を鑑賞したり、海鮮をたらふく堪能したり、歴史を感じる名所に足を運んだりするのもいいけど、坂をテーマにとことん満喫してみるのも面白そう! そこで、函館の坂を巡る旅に出発することにしました。
函館駅でマップを調達
函館に到着したのは昼過ぎ。しかし、この日はいろいろと予定が詰まっていたため、13時30分〜15時30分の2時間とタイムリミットを決めて巡ることに決めました。
まずは、函館駅でパンフレットを調達。
たしかに、19本の坂がある。しかし、2時間でどのくらいの坂を制覇できるのだろうか……。とにかく最も西側にある坂「魚見坂」から攻めることにしました。
魚見坂(うおみざか)
函館駅から市電に乗って「函館どつく前」電停で下車(ちなみに「どつく」は「どっく」と読むそう。今回の旅で知りました)。駅のすぐそばにあるのが「魚見坂」です。
閑静な住宅地を縦断する長〜〜〜い坂を登っていくと、港町らしい景色が。
ちなみに、魚見坂という名前は、回遊してくる魚群を見るのに便利な場所だったことから名付けられたそう。函館漁港と函館港の両方の景色を楽しめるのがポイントです。
この坂の景色だけで満足しちゃいそうな気分(笑)。天気がよければ、駒ヶ岳も望むことができるのだそうです。坂沿いには函館最古と言われる高龍寺があり、坂の上の方には外国人墓地もあります。
・魚見坂
所在地:函館市入舟町
船見坂(ふなみざか)
魚見坂の隣にある「船見坂」。函館の坂は横移動しながら巡るのがポイントです。
明治時代に「船見町」という名前が誕生したときに、「船見坂」と名付けられたのだそうです。その由来は、港を行き来する船がよく見えるから、とのこと。ちなみに、以前はその勾配から「地獄坂」呼ばれていたこともあったのだとか。
坂の名の通り、船がよく見えます。ずっと見ていても飽きない景色です。
坂の真ん中あたりには、レトロな洋風建築の大正湯もあります。……が、今回は坂を制覇することに必死になっていたため、スルーしてしまいました。残念。
・船見坂
所在地:函館市船見町
千歳坂(ちとせざか)
船見坂の隣にある「千歳坂」は、明治12年の函館大火後にできた坂。以前は、山上大神宮に通じる短い坂だったそうで、境内にあった不老長寿のいわれのある「千歳の松」が坂の名前の由来とされています。
・千歳坂
所在地:函館市船見町
幸坂(さいわいざか)
千歳坂の隣が「幸坂」。明治に入ってから坂下の港町を埋め立てた場所が幸町という名だったことから、幸坂と名付けられたのだそうです。
坂の突き当たりには「山上大神宮(やまのうえだいじんぐう)」が。
以前は神明宮と呼ばれていたため、この坂も神明坂という名前だったのだとか。
坂を上ると右手には「旧ロシア領事館」が見えます。しかし、ここから山上大神宮までの坂の勾配がキツかった……
坂道の脇には滑り止め用の砂が設置されていました。この坂はそのくらい急勾配ってことですね。
・幸坂
所在地:函館市船見町
姿見坂(すがたみざか)
幸坂の隣にあるのが「姿見坂」。かつてこのあたりに遊郭があり、女性たちの姿を見ることができたということから、姿見坂という名がついたのだそう。
港まで真っすぐ伸びているのがよくわかる坂です。
坂の脇にある黄色の消火栓がかわいらしくて、思わずパシャリ。東京ではこういった消火栓はあまり見かけないですね。この色も珍しいかも?
マンホールのふたもかわいい。踏んでしまうのがちょっとかわいそうなくらいです。
・姿見坂
所在地:函館市弥生町
常盤坂(ときわざか)
姿見坂の隣は「常盤坂」。江戸時代の後期に、この坂の上に商人だった大石忠次郎の屋敷があり、そこに奥州の「義経願掛けの松」と称された巨木があったことから、常磐の松にちなんでこの名がついたそうです。
こんな標識もあるので、自分がいまどこの坂にいるのかもわかりやすい。
姿見坂と常盤坂の間の一帯に遊郭があり、遊女との別れを惜しんだ客が振り返る坂ということで「見返り坂」と言われていたことも。また、大石忠次郎が経営する芝居小屋もあったため、「芝居町の坂」と呼ばれることもあったそうです。
坂の歴史や名前の由来などもこのように書かれているんです。
・常盤坂
所在地:函館市大町
弥生坂(やよいざか)
常盤坂のお隣にある「弥生坂」は、全長約720メートルと19本の坂のなかで最も長い坂です。
もともとは2本の坂だったそうですが、明治12年の大火のあとに1本の坂になったのだそう。お寺がたくさん並んでいたことから「寺町の坂」とも呼ばれていたのだとか。「弥生」は「春」を意味することから、地域の繁栄や発展を祈り、この名がついたとされています。
・弥生坂
所在地:函館市大町
東坂(あずまざか)
弥生坂の隣りにある「東坂」も、もともと2本の坂道だったのが、明治12年の大火後に1本になったのだとか。当時あったお寺の名にちなんで「浄玄寺坂」と「東の坂」という2本の坂がありましたが、1本になった際に現在の名になったそうです。
弥生坂と東坂の間の道は石畳です。
ここからの景色も最高でした。
・東坂
所在地:函館市大町
基坂(もといざか)を上りきったところにある元町公園
東坂から東へ移動すると、元町公園が。元町公園から港に伸びる坂が「基坂」です。
坂の名の由来は、明治時代に里数(道のりを「里」で表した数)を測る基点となる「里程元標」が立っていたことからだそう……しかし、うっかり写真を撮りそこねてしまいました。残念。
元町公園のそばには旧函館区公会堂があります。歴史を感じる洋館の佇まいから、函館ならではの異国情緒を感じることができました。
道路にはライトアップされた様子がわかる看板(?)のようなものも。
元町公園内には旧北海道庁函館支庁庁舎(現在は函館市元町観光案内所)などの歴史的建造物を見ることもできることもあって、これまでの坂とは違って観光客の姿も多く見られました。
・元町公園
所在地:函館市元町12
日和坂(ひよりざか)
函館港の旧桟橋から、北海道最古の船魂(ふなだま)神社まで伸びる坂です。
「日和坂」の名は、広い函館港を一望でき、空模様(=日和)を判断できたことが由来なのだそう。かつてはトンビの飛ぶ姿を見ることができたため、「トビ坂」とも呼ばれていたとも言われています。
このあたりにはお土産屋さんや飲食店などが立ち並んでいることもあり、観光客の皆さんとたくさんすれ違いました。
昆布の無人販売所も発見! 海産物が豊富な北海道らしいお店ですね。
せっかくなので、旅の思い出に購入してみました。
日和坂のそばにある「日和館(ひよりかん)」という雑貨屋さんも気になって、立ち寄ってみることに。
建物は大正10年築。函館市の伝統的建造物としても指定されているのだそうです。
店内に入ると、動物をモチーフにした雑貨がずらり。
こちらは函館市の隣町である七飯町在住のクラフト作家・成田粋子(すいこ)さんが手がける「北うさぎ」グッズ。
羊毛フェルト作家の奥村貴美子さんが手がけたキュートな作品も並んでいました。
(※撮影禁止と書かれていますが、今回はきちんと許可をとっております)
こちらは代表の犬石道三さん。一つひとつの作品について丁寧に教えてもらいました。坂巡りの合間にほっこりとしたひとときを過ごしたい人や、函館でしか手に入らない雑貨を探したい人におすすめのお店です。
・日和館
住所:函館市元町10-13
電話番号:0138-27-2685
営業時間:10〜16時
定休日:夏期(5〜10月)=不定休、冬期(11〜4月)=月曜
http://www.hiyorikan.com/index.html
・日和坂
所在地:函館市末広町
八幡坂(はちまんざか)
ついにたどり着きました……! 函館の坂といえばここ。冒頭でも紹介した、函館の名所として知られる坂です。CMなどでもたびたび登場するほか、ガイドブックなどには必ずと言っていいほどこの坂が載っています。
八幡坂はビュースポットなだけあって、坂の上ではカメラをかまえる観光客の姿も多く見られました。
ちなみに「八幡坂」の由来は、かつてこの坂の上に函館八幡宮があったからなのだそう。冬はイルミネーションも楽しめるのだとか。季節ごとに異なる坂の表情を楽しむのもいいかもしれません
下から八幡坂を見上げるとこんな感じです。
坂の脇には手すり付きの階段もありました。急な勾配の坂でも歩きやすくするための工夫なのでしょう。
夜は、街灯にほのかに照らされた坂道ときらめく港の風景があいまって、なんともムーディーな雰囲気でした。
・八幡坂
所在地:函館市末広町
大三坂(だいさんさか)
八幡坂の隣にあるのは、国土交通省が定めた「日本の道100選」に認定されている「大三坂」。
「大三」という名前は、地方から奉行所へやってくる人たちのために、坂の入り口に建てられていた郷宿の家印に由来すると言われているそう。木下さんという人の家がかつて坂の下にあったことから、「木下の坂」と呼ばれていたこともあるのだとか。
坂沿いにはカトリック元町教会があります。
カトリック元町教会は夜になるとライトアップされます。石畳の坂とマッチして、ヨーロッパの街並みを切り取ったような風景を楽しむことができるのがポイントです。
・大三坂
所在地:函館市末広町
チャチャ登り
大三坂を登りきった上にある小さくて細い坂が「チャチャ登り」です。チャチャとはアイヌ語で「おじいさん」という意味で、おじいさんが腰をかがめて上らないといけないほど急な坂という意味なのだそう。
聖ヨハネ教会(改装中で見られませんでした)とハリストス正教会の間にあり、道幅は車1台がやっと通れるくらい。この小さい石畳の坂道がなんとも言えない情緒を醸し出しているのです。
・チャチャ登り
所在地:函館市元町
二十間坂(にじゅっけんざか)
道幅が二十間(約36メートル)あることがこの名の由来。函館で何度も発生した大火事に備えてこのような広い坂が整備されたのだそうです。
この道幅の広さゆえに、明治時代には函館山に装備する大砲を運ぶのにも使われたと言われています。坂の上に大工さんがたくさん住んでいたことから「大工町坂」とも呼ばれていたそうです。
坂のふもとで見つけたのがこのお店。ツタがからまっていて、最初は何屋さんなのかわからなかったのですが……
ケバブとカレーとラップサンドを提供する「PazarBazar」というお店でした。この建物はもともとレンガ造りの倉庫だったのだそう。ちなみにこのツタは冬になると枯れてしまうのだとか。
店主の国立(くにたて)さんが「お店の中に好きなランプを吊るしたかった」とおっしゃる通り、色とりどりの美しいランプがきらめいていました。
店内にはスパイスのいい香りが漂っていました。しかし、時間が気になっていたので、ゆっくりと味わうことができなかったのが心残りです……今度函館を訪れるならぜひまた足を運びたいです。
・PazarBazar
住所:函館市末広町17-19
電話番号:0138-83-8606
営業時間:11〜21時(※売り切れ次第早期閉店あり)
定休日:日曜・月曜
http://pazarbazar.org/
・二十間坂
所在地:函館市末広町
南部坂(なんぶざか)
坂を上りきったところに、函館山に上る函館山ロープウェイ山麓駅がある「南部坂」。
江戸幕府が蝦夷地を直轄していた時代に、南部藩の陣屋がこの地にあったことから、この名がついたとされています。
・南部坂
所在地:函館市末広町
護国神社坂(ごこくじんじゃざか)
突き当たりに「函館護国神社」がある広い坂。坂の中央分離帯には、函館の発展に貢献した江戸時代の商人である高田屋嘉兵衛の銅像がそびえています。
ちなみに、函館護国神社は創建当時「招魂社」という名だったことから、かつては「招魂社坂」と呼ばれていたのだとか。また、坂の上に汐見町という地名ができたことから「汐見坂」と呼ばれていたこともあるそうです。
・護国神社坂
所在地:函館市宝来町
しかし、ここでタイムオーバー。残念ながら「谷地坂」「あさり坂」「青柳坂」を巡ることはできませんでした。無念……
それでも、約2時間で19本中16本の坂を巡ることができました。隣り合っている坂がほとんどだったこともあり、サクサクと巡ることができたと思います。
こんなに夢中になって坂を巡ったことははじめてでした。坂の勾配がキツくて、正直途中で何度もくたびれてしまいそうになりましたが、坂の上から見える景色や坂ごとに異なる表情を楽しむことで、いつの間にかそんな疲れも吹っ飛んでいました。新たな旅の仕方を発見できたと思います。
今度函館を訪れるときは、今回巡ることができなかった3つの坂をぜひ見に行きたいです。坂を巡ることばかりを意識しすぎたために、素通りしてしまった名所もいくつかあるので、そういったところもゆっくりと見て回りたいですね。
(おまけの話)
翌日、朝市散策に出かける道中で、突然地元のおじさんに話しかけられました。わたしが観光客だということを知ると、「八幡坂がよく見えるスポットがある」を教えてくれたのです。
それがここ。かつて青函連絡船として活躍していた「摩周丸」が停泊する埠頭です。この埠頭から函館山のほうに振り向いて撮影した写真がこれです。
写真の真ん中あたりで街の中に浮き上がっているように見える道が、八幡坂です。おじさんの言う通り、山に向かってまっすぐ伸びる坂を見ることができました。19本も坂があるのに、この坂だけここから見えるのもなんだか不思議ですね。
函館で坂巡りをするなら、このアングルでも坂を楽しんでみてはいかがでしょうか。
※注意※ 坂を撮影するときは、交通ルールを守って、歩行者や車の邪魔にならないように注意してくださいね。
参考:函館市公式観光情報サイト「はこぶら」
https://www.hakobura.jp/
記事執筆:大井あゆみ
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