道端に突然イチゴやメロンが出現! 長崎の名所「フルーツバス停」巡りをしてきた【フルーツバス停完全ガイド】

道端に突然イチゴやメロンが出現! 長崎の名所「フルーツバス停」巡りをしてきた【フルーツバス停完全ガイド】

地方を旅すると、辺鄙なところに突然見どころが現れるものだから油断ならない。長崎県の「フルーツバス停」もそのひとつである。長崎の端、佐賀県との県境付近にイチゴやメロンなどのフルーツの形をしたバス停が並ぶ一画があるのだ。道に突然大きなイチゴの建物がある以外はごく普通の道路。日常の中に何の前触れもなく非日常が現れるという、ちょっとした狂気性をはらんだエリアになっている。

いちごのバス停

電車の駅で言うと、長崎本線の長里駅~小長井駅。「ときめきフルーツバス停通り」と名付けられ、近辺ではグッズも販売。おそらく市は観光スポットとして推し出そうとしている。……なのに。長崎本線は一日にたったの9本。そればかりか、長里駅着の電車は6:54、7:31、8:17と午前中の3本の次は、なんと13:41着! 飛行機でやってくる遠方の観光客は、ほぼ強制的に13:41着の電車にせざるを得ない。つまり、フルーツバス停を観光するには、「午前中は移動に費やし、バス停を見るだけで日が暮れる」という奇特な旅行プランを組むよりほかないのである。とんでもなく来づらい! どう考えても今のこのSNS時代にピッタリな観光スポットだというのに、せっかくのフルーツが泣いている。地方のマイナーエリアにありがちなそういう媚びないところ、嫌いじゃない。

メロンのバス停

そういうわけで、フルーツバス停巡りの旅に行くことにした。丸一日、フルーツバス停を見るためだけに長崎へ行き、そして帰る。そういう旅である。そもそもたぶん、車で行くことしか想定されていない地域なのだろうけれど、電車だけでも観光できることを気合いで示したい。フルーツ型のバス停は全部で16つ。タクシーに乗り、ひとつひとつのバス停で一時停車し、写真を撮る、というのを繰り返した。

なお、長崎空港から、フルーツバス停の開始位置である長里駅まではバスを乗り継ぐなどさまざまな行き方がある。一番簡単なのは、空港からタクシーで大村駅へ行き(タクシー料金は1500円程度)、大村駅からJR大村線に乗って諫早駅へ。諫早駅からJR長崎本線で長里駅まで行くルートだ。

長里駅

長里駅へ着いたら電話でタクシーを呼ぶ。運転手さんに「すべてのフルーツバス停の写真を撮りに行きたいんです」と伝えた。

ときめきフルーツバス停通りマップ

スタート地点の「殿崎」はスイカ。バス停のそばには「ときめきフルーツバス停通り」の看板も立っていた。

フルーツバス停

スイカのバス停

丸いフォルムが太陽に照らされて美しい。後ろ側から見ると、もうほとんどスイカだ。バス停としてのアイデンティティはもはや失われているといって差し支えないだろう。

スイカのバス停

くり抜かれている正面には椅子があり、ここに座ってバスを待つことになる。

スイカのバス停

タクシーの運転手さんは、「こっち側からは撮りました?」、「シャッター押しましょうか?」と手厚くサポートをしてくれる。フルーツバス停を撮りたい私の熱意が伝わり、地元の名所を撮ってほしい運転手さんの熱意を呼んだのだ。

写真を撮り終え、再びタクシーに乗った。ここからまっすぐ佐賀県方面へ向かうと、すぐに次のバス停「平原」が見えてくる。「平原」のバス停近くに、フルーツバス停周辺のマップもあった。

フルーツバス停周辺のマップ

「平原」のバス停はイチゴ、向かい側にはメロンだ。

いちごのバス停

いちごのバス停

イチゴのつぶつぶの部分は立体的に作られている。こういうさりげなくリアリティーを出してくるところがまたいい。

メロンのバス停

メロンもまた、表面の網目模様がデコボコと飛び出ている。ちなみに、フルーツバス停の施工をしたのは、株式会社吉次工業という会社。タクシーの運転手さんは、フルーツバス停を巡る道すがら、民家を指して「あそこにあるのは吉次工業のナントカさんの自宅なんだよ」とか思いっきり個人情報を言っていた。会社の場所かと思ったら、自宅。いいのかよ、そんなの教えちゃって。「ここらへんの人はみんな知ってるんだよ」と続ける。そういうものなのか。

みかんのバス停

次は「小深井」。みかんとトマトのバス停があるのだが、この2つはかなり対照的だった。みかんのほうは周辺に樹が生い茂っているため、よく馴染んでいる。道端に急にみかんがあることにまったく違和感がない。ちょっとジブリに出てきそうな感じすらある。

トマトのバス停

対して、「小深井」の向かい側にあるトマトのバス停は、周囲に民家があるため、トマトが浮きまくっている。というか、そもそもトマトはフルーツなのだろうか。古くからある議論だが、なんといまだに明確に定義されていないどころか、国によって認識が異なるらしい。昔、トマトは野菜かフルーツかについて裁判沙汰になったアメリカでは野菜、台湾ではフルーツとされている。日本では野菜派のほうが多いように思う。なぜ、「“フルーツ”バス停」と銘打っておいて、わざわざ微妙なラインであるトマトをセレクトしたのか……。釈然としない気持ちを抱えながら、次のバス停「長戸」へ向かった。

みかんのバス停

「長戸」のバス停は再びみかん。フルーツバス停のフルーツは全部で5種類なのだ。つまり、ひとつ前の「小深井」で、スイカ、イチゴ、メロン、みかん、トマトの全種類が出そろったことになる。ここから先はおそらくランダムで登場するはずである。

いちごのバス停

いちごのバス停

役場周辺の比較的にぎわっているところに突然イチゴがあるコントラストは必見。大通りの看板や建物の間からひょっこり生えているイチゴ。イチゴの目の前を車がびゅんびゅん走っていた。

いちごのバス停

次の「井崎」はフルーツバス停きってのフォトスポットと言われている。検索して出てくるフルーツバス停の写真は、おそらくほとんどが「井崎」のバス停。有明海に面したメロンが最高に美しい。雲ひとつない晴れた日にもぜひ来てみたい。

メロンのバス停

反対側にあるのはイチゴ。ここまで見てきてフルーツバス停の法則性がなんとなく掴めてきた。重要そうな場所でのイチゴの出現率が非常に高いのだ。フォトスポットである「井崎」はイチゴとメロン。中心部の「小長井支所前」もイチゴ。看板があった「平原」もイチゴとメロン。スタート地点の「殿崎」はスイカ。運営側としてはイチゴがイチ推しで、次点でメロンとスイカ、ということなのだろうか。

井崎のバス停

井崎のバス停

ここから次の「大久保」までは少し距離がある。しばらくすると、トマトが見えてきた。

トマトのバス停

同じ赤と緑の配色であるイチゴと比べると、やはり少々地味なのは否めない。でも、トマトは実はフルーツバス停の中で最もレアな存在である。16つのうち、イチゴとみかんが4つ、メロンとスイカが3つ、トマトだけ2つしかないのだ。やはり、その地味さゆえに運営から推されていないのだろうか。頑張れトマト。

トマトのバス停

スイカのバス停

次のバス停「築切」はスイカ。スタート地点「殿崎」以来の登場である。

築切のバス停

「築切」の向かい側のバス停はフルーツではないが、中にフルーツバス停の絵が描かれていた。ただし、絵はスイカではなく、メロン。

メロンの絵

釜のバス停

次は「釜」というバス停。メロンの登場はこれがラストだ。

釜のバス停

さて、「殿崎」から海沿いを進んできた「フルーツバス停通り」もこれが最後。「阿弥陀崎」にはスイカとみかんのバス停があった。

スイカのバス停

ここのみかんは、今までに見たみかんとは微妙に色が違っていた。

阿弥陀崎のバス停

「小深井」や「長戸」のバス停にあったみかんはレモンに近い黄色。「阿弥陀崎」のみかんはややオレンジがかっている。バス停によってみかんの品種が違うということだろうか。芸が細かい。

みかんのバス停

ここ「阿弥陀崎」は佐賀県方面から来た場合のスタート地点にもなるため、「ようこそ ときめきフルーツバス停通りへ」という看板が置かれていた。「バス停戦隊フルーツレンジャー」とも書かれているが、フルーツレンジャーらしき戦隊は近くに見当たらず、なんのことだかよくわからなかった。

バス停戦隊フルーツレンジャー

ここまででタクシー料金は7000円ほど。思っていたよりも安価で済んだ。なお、ここから少し離れたところにも2つ、フルーツバス停がある。「小長井支所前」のあたりから内陸部にしばらく進むと、「畜産センター前」というバス停が見えてくる。ここには、ゼリーでおなじみの株式会社たらみの工場があるのだ。たらみのゼリーといえばみかん……だからなのか、ここのバス停もみかんだった。

みかんのバス停

しかも、色がほかのみかんバス停と比べて明らかに濃い。みかんを扱う工場の目の前なだけあって、実際のみかんにかなり寄せてきている。ちなみに、日によっては工場見学ができることもあるため、事前にチェックしてから来るのがおすすめ(完全予約制)。

畜産センター前のバス停

最後は「山茶花高原」へ。ここは「山茶花高原ピクニックパーク」という、小さな遊園地のようになっているレジャースポットだ。この入口付近にイチゴのバス停がある。

イチゴのバス停

ここはすべてのフルーツバス停の中で最も色がキレイだった。それもそのはず、フルーツバス停は2016年から2年かけて少しずつ色の塗り直しが施されているのだ。おそらく、この「山茶花高原」のバス停は、塗り直されたばかりなのだろう。

イチゴのバス停

近くで見ると、おとぎ話の舞台にしか見えないが、遠くから見ると、急に現実感が出る。

イチゴのバス停

撮ってよし、見てよし、触ってよし、これですべてのフルーツバス停を制覇した。所要時間は2時間半ほど。14時少し前から巡り始め、完了したのは16時半頃だった。タクシー料金はトータルで約9000円。旅行の交通費として考えると、9000円はじゅうぶん許容範囲内だ。タクシーを利用したフルーツバス停巡りは、全然無茶な話ではなかった。

ちなみに、フルーツバス停が並ぶ海沿いの通りで、シーズンオフの牡蠣小屋をいくつも見かけた。この近辺は牡蠣がおいしいことでも有名らしい。11月~2月の牡蠣の季節に合わせて来るのもいいかもしれない。

イチゴのバス停

最後に、「山茶花高原ピクニックパーク」の物産店でフルーツバス停グッズを買って帰ろうと思う。地元の人たちが手作りしたオリジナルグッズがここで売られているらしいのだ。

山茶花高原ピクニックパーク

フルーツバス停グッズ

店内に入ると、なかなか味のあるグッズが多数並んでいた。コースターにマグネット、ストラップ、マグカップ、思っていた以上に種類がある。

フルーツバス停グッズ

フルーツバス停グッズ

中でも、ぶっちぎりで心惹かれたのはマグカップである。

フルーツバス停マグカップ

近所の保育園の園児が描いたフルーツバス停の絵がプリントされたマグカップ、園児の作品と思えばものすごくクオリティが高い。園児云々は置いておいても、この絶妙なゆるさが最高にかわいい。売っていたのは、みかん、トマト、イチゴ、メロンのデザイン。絵のタッチからすると、すべて一人の園児が描いたのだろうか。末恐ろしい才能である。

トマトのバス停マグカップ

みかんのバス停マグカップ

ハーブ園

「山茶花高原ピクニックパーク」の奥のほうにはハーブ園があり、ここの中にもフルーツバス停が散りばめられていた。

ハーブ園

フルーツバス停風鈴

フルーツバス停グッズ

フルーツバス停は、この地域で明らかに観光名所として扱われている。けれど、世の中にはフルーツバス停に関する情報があまりに少ない。写真やちょっとした紹介記事はあれど、フルーツバス停のすべてを網羅した記事は、私が探した限りひとつもなかった。過去に新聞やテレビで取り上げられた断片的な情報が、インターネットのあちこちに散らばっているくらいだ。観光情報誌で大きく取り上げられているのも見たことがない。この記事をもって、「フルーツバス停完全ガイド」としたい。

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