もつ鍋が好き過ぎるから、ひたすらもつ鍋だけを食べ続ける福岡一人旅に行ってきた

もつ鍋が好き過ぎるから、ひたすらもつ鍋だけを食べ続ける福岡一人旅に行ってきた

ときどき、猛烈にもつ鍋が食べたくなることがある。類似の現象はラーメンや焼肉でも起こる。今日はどうしてもラーメンの気分だ、焼肉を食べないと気が済まない、などだ。あの感じと似ている。もつ鍋を食べないとおさまらない衝動が、私の中に棲んでいるのだ。ただ、問題は寒い季節でないと鍋を食べる機会になかなか恵まれないことである。私のもつ鍋パトスは春だろうが夏だろうが関係なく生じる。満たされることなく行き場をなくしたもつ鍋欲をどうにかしたい。

そこで私は、朝から晩まで福岡でもつ鍋だけを食べ続ける、もつ鍋巡りの旅をすることにした。ルールはただひとつ。すべての食事でもつ鍋だけを食べること。今まで食べたことのないような珍しいもつ鍋に出会えるとなおよし。

もつ鍋

もつ鍋「巡り」と銘打つからには、最低でも3軒、できれば4軒は巡りたいが、何日も連泊するつもりはない。ほかの観光もするならばまだしも、今回はもつ鍋にしか用がないからである。とんこつラーメンや明太子や太宰府といった福岡名物には見向きもせず、1泊2日の間に凝縮してもつ鍋を食べたい。ただ、もつ鍋を食べるためだけに福岡に行き、そして帰る。そんなストイックなもつ鍋旅行をしたいのだ。

もつ鍋

ボリュームのあるもつ鍋を1泊2日で何度も食べるには、スケジューリングが重要となってくる。そこで、初日の昼食(11時頃)、夕方(17時頃)、深夜(0時頃)、2日目の夕方(17時頃)にそれぞれ店舗入りすることにした。初日は1軒目で早めの昼食をとることで、夕方にはお腹が空く。2軒目で早めの夕食をとり、3軒目は再びお腹が空いた頃に遅くまでやっている店へ。2日目は少し胃を休ませてから、夕方に4軒目へ。夜タイムオープン直後に入店すれば、帰りの飛行機の時間に間に合う。また、胃腸を万全にして臨むべく、福岡に発つ数日前からお酒と脂っこいものを控えて体調を整えた。これはもう、もつ鍋アスリートと言って差し支えないのではなかろうか。もつ鍋アスリートって一体何なのか分からないけど。

■1日目11:30 1軒目『元祖博多麺もつ屋』 麺にこだわりのある一人もつ鍋専門店

朝9時台の飛行機で11時過ぎに福岡に到着。福岡は空港から電車に乗って10分くらいで天神などのグルメエリアに着くため、すぐに観光ができる。天神にはもつ鍋の店はもちろん、ラーメン屋もたくさん並ぶ。

一人もつ鍋専門店

まずは、「一人もつ鍋」と書かれた看板が目立つ『元祖博多麺もつ屋』へやってきた。福岡のもつ鍋屋のほとんどは夜のみの営業。ここはお昼からやっている数少ない店である。今回の旅でひとつ懸念しているのが、鍋は基本的に二人前からしか頼めないのではないか、という点。各店舗で二人前食べなければならないことも覚悟している中、一人もつ鍋の専門店はありがたい。

元祖博多麺もつ屋

カウンター席のみの狭い店内に、小さなコンロが並んでいる。もつ鍋屋というよりも、ラーメン屋に雰囲気が近い。店一番の自慢も麺で、「鍋はシメで食べる麺がおいしいのに、そこまで辿り着かずにお腹いっぱいになるのはもったいないから」と最初から麺が入った状態で調理される。シメを食べてほしいゆえに、シメの概念をなかったことにするという、ダイナミックな理屈である。曰く、「のびづらい麺なので、最初から入れても大丈夫」。そこまでして麺を主役に押し出すあたり、ますますラーメン屋っぽい。もつ鍋というより、もつ入り野菜ラーメンという感じなのかもしれない。

もつ鍋を食べる女性

麺にこだわるだけあって、ほのかな甘みのある麺はスープによく合っていた。量はハーフサイズでラーメン一杯分くらい。上質なもつを使った「極み麺もつ」(通常1490円/ハーフ1090円)がおすすめ(数量限定)。

元祖博多麺もつ屋
元祖博多麺もつ屋
住所:福岡県福岡市中央区春吉3-11-17
電話番号:092-771-5266
営業時間:11:30〜16:00、17:00〜24:00
定休日:不定

■1日目17:00 2軒目『元祖博多めんたい重』 明太子の調味液に漬け込んだもつ鍋

元祖博多めんたい重

お腹が減った頃合いに、『元祖博多めんたい重』へ。ちなみにこの店は7:00~22:30までやっている。ただしもつ鍋は17時以降限定のメニューだ。ちなみに、東京・池袋には『元祖めんたい煮こみつけ麺』という系列店がある。

めんたい煮込みもつ鍋

この店のオリジナルもつ鍋「めんたい煮込みもつ鍋」(1800円※麺セット)は、福岡名物の明太子ともつ鍋を掛け合わせたメニュー。スープの中に明太子のつぶが沈んでいるほか、よく見たら、もつの表面にも明太子らしき赤いつぶつぶが見える。明太子で使用する調味液に、もつを漬け込んでいるらしい。スープは鶏ガラがベースで、いわゆるもつ鍋のスープよりもあっさりしている。明太子の調味液の味とマッチするように、試行錯誤してこの味が生まれたのだそう。

ニラと豆腐

もやしやニラ、豆腐など、ベーシックな具材に混ざって、にんにくの芽が入っているのが特徴的。食感を楽しんでもらうために入れているようで、随所にこだわりを散りばめて作られたもつ鍋だった。福岡のもつ鍋では、シメでちゃんぽん麺を使うことが多いのだが、そこも喉ごしつるつるの麺をオリジナルで作っている。明太子のピリ辛風味のおかげで、脂っこさを感じにくいもつ鍋で、もつ鍋食べ歩きの際にはぜひラインナップに加えてほしい店だった。

元祖博多めんたい重

ちなみに、ありがたいことに鍋は一人前から出してもらえた。広報担当の方によると、これにもちゃんと理由があると言う。「福岡に住んで14年になりますが、私の経験上では一人前から注文できるお店はほとんど見かけたことはございません。そういった理由から『元祖博多めんたい重』では一人前から注文いただけるようにいたしました。一人旅の方や出張でいらっしゃったビジネスマンの方などに非常に喜ばれております」とのこと。

元祖博多めんたい重
住所:福岡県福岡市中央区西中洲6-15
電話番号:092-725-7220
営業時間:7:00〜22:30
年中無休
http://www.mentaiju.com/

■1日目23:30 3軒目『とりのてつ 大名店』 卵黄につけて食べるすき焼き風もつ鍋

23:30、本日最後のもつ鍋を食べに行った。『とりのてつ 大名店』は17:30~翌1:00までやっている店である。

とりのてつ 大名店

案内されたのは、窓に面した個室。狭い空間が落ち着く。

個室

「もつすき鍋」(1580円)を注文すると、どう見てもすき焼きにしか見えないセットがやってきた。

もつすき鍋

入っているのはえのきだけや春菊など、すき焼きでおなじみの具材。スープがグツグツと煮立つ様子もすき焼きそのものだが、底のほうにはちゃんともつが沈んでいる。すき焼きの味ともつ、この組み合わせは果たして合うのだろうか。

もつすき鍋

もつすき鍋

卵につけて、いよいよもつをいただく。

卵ともつすき鍋

……! これは……! なんということだろう。味のバランスとか、合う合わないとか、そういう次元の話ではなかった。これは、暴力である。暴力でねじ伏せる、おいしさ。そもそも、醤油・みりん・酒・砂糖を使ったすき焼きの割り下はおいしい。卵もおいしい。もつもおいしい。それを一緒に食べるのだから、おいしい。そういう感じの暴力性がある。すき焼きと卵の前には、人は無力。でこぼこしたもつの隙間に、割り下と卵黄が絡まり、口の中でもつの脂の甘みと混じり合う。おいしさがおいしさを呼ぶ、それが「もつすき鍋」である。

卵ともつすき鍋

とりのてつ 大名店
住所:福岡県福岡市中央区大名1-10-29
電話番号:092-725-2008
営業時間:17:30〜翌1:00
定休日:月曜

■2日目18:00 4軒目『もつ繁』 醤油と日本酒で煮込むもつ鍋

もつ繁

最後は人気店の一つである『もつ繁』へ。営業時間は18:00~24:00。18:00の開店と同時に入り、そのまま東京へ帰る。

この店の名物も「もつのすき焼き」(1300円)だが、味付けはいわゆるすき焼きとは異なる。砂糖を使わずに、醤油と日本酒と唐辛子で煮込むのだ。少々気難しそうな店主が目の前で調理してくれた。

もつのすき焼き

まずはにんにくを熱して、もつを炒める。もつ鍋でよく使われる部位のほかに、センマイやハツなどあらゆるホルモンが投入された。唐辛子を大量にふりかけて、醤油出汁を入れて、沸騰したら日本酒を注ぐ。

ピリ辛のもつ鍋

ピリ辛の味付けがもつの脂を中和していて、驚くほどさっぱりした味わいだった。もつ鍋というより、ホルモンのすき焼き煮といったほうが近い。

もつのすき焼き
もつ繁
住所:福岡県福岡市中央区赤坂2-3-27
電話番号:092-761-3497
営業時間:18:00〜24:00
定休日:日曜

2日間で4軒のもつ鍋店を巡ったが、どれもそれぞれ方向性が異なるもつ鍋ばかりだった。「もつ鍋」という料理のアレンジは驚くほど幅広い。アレンジのおかげで、一度も飽きずに巡りきることができた。天神駅付近のもつ鍋を巡っただけでもこれだけのアレンジもつ鍋があったのである。世にはまだまだ見たこともないもつ鍋がありそうだ。

私は何らかのルールを課して旅をするのが好きだ。「ルール」は旅を何倍も面白くしてくれる。「すべての食事でもつ鍋だけを食べる」が今回のルールだった。端から端までもつ鍋を求めて回ることで、普通に旅行していたのではありつけないような変わったもつ鍋を体験することができた。「ルール」は食べ物じゃなくてもいい。例えば、「コンビニを見つけたら必ず看板を撮って回る」というルールであれば、道中コンビニを見かけるだけで嬉しくなるだろう。
「ルール」は旅のなんでもない出来事に彩りを与えてくれるのである。

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