水と戦い続けた人々の壮絶な歴史が作った、オランダの世界遺産
オランダと言えば風車、チューリップ、チーズを思い浮かべる方も多いでしょう。そんな美しく素朴なイメージのあるオランダですが、実は国土の四分の一が海抜ゼロメートル以下という過酷な土地で成り立っています。
国土に恵まれなかったオランダの人々の歴史は、壮絶な水との戦いを経て、17世紀には世界の貿易国としてヨーロッパの頂点を極めました。そんな勤勉なオランダ人が遺した素晴らしい世界遺産をご紹介します。
牧歌的風景に隠された歴史、キンデルダイクの風車とベームステル干拓地
キンデルダイクの風車
オランダでは、土地を干拓するため治水システムとして古くから風車が使われていました。19世紀には1万基ほどあったオランダの風車は、今では約千基ほどしか残っていません。「キンデルダイクの風車」はオランダで現存する風車網の中で最大級のもの。
18世紀半ばに建てられた19基の風車は、7月と8月に実際に動いている様子を見ることができます。青く輝く空と運河の間に浮かぶ古い風車網は、おとぎの国にタイムスリップしたかのような気分にさせてくれます。風車のいくつかは博物館として中を見ることもでき、メンテナンスのために実際に住居としている人もいるとか。
オランダ第二の都市ロッテルダムからメトロで約30分、さらにバスに乗り換えて40分で到着します。または水上バスを乗り継いで行くこともできます。キンデルダイクではレンタサイクルを利用するのもおすすめです。
ベームステル干拓地
アムステルダムから約32キロ北上に位置する「ベームステル干拓地」はオランダで最も古い干拓地で、17世紀前半に完成しました。当時、オランダは世界屈指の測量技術を駆使して約72万平方キロメートルにも及ぶ湖や湿地からなるこの土地を、風車を使い水をくみ上げ、縦横に走る水路で区画し、見事な耕地へと干拓したのです。
現在も、風車、酪農牧場、野菜畑、果樹園、チューリップ畑が広がり、8,500人ほどが暮らしています。果てしなく続く澄み切った空と緑の大地、草をはむ羊や牛たち、可憐に咲き誇るチューリップ、17世紀そのままの姿をした家々…これらののどかな風景は人々の心を癒す絶景と言えるでしょう。
その歴史的技術と景観デザインでユネスコの世界遺産に登録されました。
黄金の17世紀に想いを馳せる!アムステルダムの運河
北のベニスともよばれる水の都、アムステルダム。都市の周りを同心円状にはりめぐらされた「アムステルダムの運河」は全長100キロメートル以上、なんと1,500もの橋があり、まさにアムステルダムの象徴です。元々は小さな漁村でしたが、16世紀以降、ジェノバに代わり世界的な貿易中継都市・金融都市として発展し急激に増えた人口の住宅供給と防衛のため、運河を取り入れた都市計画が開発され、17世紀にこの美しい環状運河が出来上がりました。
その中でも、三運河と呼ばれる「シンゲル運河」、「へーレン運河」、「ケイザー運河」から眺める街の風景は見逃せません。中世の面影が残る間口の狭い古い家、オランダ・ルネサンス様式の優美な大邸宅、豪華なカナルハウス、ヨーロッパの商業都市の象徴であるギルドハウスや、美しく統一された記念建造物が1,500以上もあります。「アムステルダムの運河」はまさにオランダの『黄金の17世紀』を代表する世界遺産と言えるでしょう。
一度も使われることのなかった軍事建築!? アムステルダムの防塞線
オランダの首都アムステルダムを取り囲むように配置された全 長135キロメートルの堤防と42の要塞からなる「アムステルダムの防塞線」は、19世紀末から20世紀初頭にかけて建造されました。この防塞線はアムス テルダム市街地を洪水から守り、敵の侵入を防ぐ防衛ラインとして築かれました。
戦時には堤防の外側を冠水させ、敵が入れないように設計され たのですが、完成前に起こった第一次世界大戦では既に戦闘機が導入され、実際にこの防塞線が使用されることはありませんでした。しかし、水を使ったこの軍 事建築には歴史的価値が認められ、世界遺産として登録されました。
オランダの世界遺産一覧
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オランダで人気の世界遺産
- ベームステル干拓地
- アムステルダムの防塞線
- アムステルダムの運河
- キンデルダイクの風車
オランダのその他の世界遺産
- キュラソー島(ウィレムスタット)
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