マテーラのサッシは絶景の宝庫! 石灰岩の洞窟住居を巡る旅

マテーラのサッシは絶景の宝庫! 石灰岩の洞窟住居を巡る旅

イタリア半島をブーツに例えると、ちょうど土踏まずのあたりに位置するバジリカータ州。その東に位置するマテーラには、一風変わった不思議な光景の観光地があります。旧市街地に広がる「サッシ」と呼ばれる住居群がそれで、石灰岩をくり抜いて形成されたことから洞窟住居という別名も。その名前の通り、少し奇妙な雰囲気を感じる街です。

マテーラは1993年に世界遺産に登録されたこともあり少しずつ観光客を集めるようになりましたが、ヴェネツイアやフィレンツェなどと比べるとまだまだ穴場といえる存在。定番の観光地はもう巡り尽くしたという方にも、まだこれからイタリアの魅力を発掘したい方にもぜひ訪れてほしい場所です。

今回はこのマテーラの魅力や観光地としての楽しみ方などを、現地からお届けします。

石灰岩をくり抜いて作られた街マテーラ、その生い立ちは?

マテーラについて説明する前に、まずはもう一度サッシの街並みの写真をご覧ください。

マテーラの全景
マテーラの全景、どのような印象を持ちますか?

いかがでしょうか。南イタリアといえば地中海に面したリゾート地や古代ローマ時代の遺跡群などが有名ですが、そのどちらとも違う奇妙な空気を感じるのは私だけではないはず。廃墟のような不気味さというか、街が朽ちていく経過を見るような退廃美というか……。

いずれも観光地らしい形容でないことは重々承知ですが、しかしこの「奇妙な雰囲気」こそがマテーラの魅力でもあり、多くの観光客を引きつけるゆえんでもあるのです。

街歩きをしていると、洞窟に迷い込んだような気持ちに
街歩きをしていると、洞窟に迷い込んだような気持ちに

マテーラに人が住むようになったのは非常に古く、その歴史は先史時代にまでさかのぼります。街の裏側に広がるグラヴィーナ渓谷には、もともと風雨の浸食により多くの洞窟が形成されており、そこに人が住み着いたのが街の始まりと言われています。

グラヴィーナ渓谷の岩肌には今も洞窟の姿が見える
グラヴィーナ渓谷の岩肌には今も洞窟の姿が見える

その後、支配者の迫害から逃れたギリシャ正教の修道僧がやってきたり、この地の農民が住むようになったりして、街は少しずつ拡大していきます。当初は自然に作られた洞窟を利用していた住居のまわりにも、石灰岩を掘って道や階段が作られ、街らしい姿に整えられていきました。

17世紀頃には、マテーラはバジリカータ州の州都に選ばれるなど繁栄期を迎えます。
しかし、こうした街や人口の拡大は皮肉にも貧富の差を生むことにつながりました。その結果、裕福な人々は高台に新しく作られた新市街地に住むようになり、貧しい人々は洞窟住居に取り残されます。こうした背景もあり、サッシ地区はこの地方の貧しさの象徴的な存在になっていったのです。

20世紀に入るとさらに人口は増加し、水はけや採光に問題を抱えるサッシの住環境は悪化していきました。衛生状態も悪く、当時は乳児の死亡率が50%にも達していたと言われています。

行政側もこうした状況を放置するわけにはいかず、1950年代には住民を強制移住させ、街は住む人のいない廃墟となってしまいます。マテーラのサッシの風景に少し暗さや物悲しさを感じるのは、こうした歴史があることとおそらく無関係ではないでしょう。

いったんは廃墟となったマテーラのサッシですが、現在は洞窟住居や岩窟教会などユニークな生活の様子が文化遺産として見直され、街を保存・再生させる動きが生まれています。

1993年には「マテーラの洞窟住居と岩窟教会公園」として、南イタリアで初めて世界遺産に認定され、これをきっかけにサッシ地区に戻る人や、観光客の姿も増えてきました。

観光客向けのイベント
観光客向けのイベントがあるなど(画面中央の白ポイント)旅行者を誘致する取り組みも多い

また、マテーラは2019年の欧州文化首都に選ばれたことでヨーロッパ各国の文化交流イベントも開催されており、国際的な注目を集めるようになっています。一度は衰退したものの、ユニークな文化や歴史を持つ街としてまた新たに発展し始めている、それが現在のマテーラの姿なのです。

新市街地には欧州文化首都であることを知らせる旗が並ぶ
新市街地には欧州文化首都であることを知らせる旗が並ぶ

マテーラの見どころは洞窟住居と教会

マテーラには独特の雰囲気があるので、ただ街歩きをしているだけでも楽しいのですが、やはり見どころは当時の生活の様子がうかがえる洞窟住居や教会です。

18世紀頃の生活の様子がうかがえる「グロッタの家」

マテーラ観光で何をおいても訪れてみたいのが、サッシ地区の南部にある「グロッタの家」です。18世紀初頭に建てられた住居の中には当時の家具がそのまま残されており、洞窟の中の生活がどんなものであったかをうかがうことができます。

ニワトリはベッドの下で飼われていたのだとか
ニワトリはベッドの下で飼われていたのだとか

当時の生活で驚かされるのは、ロバやニワトリなどの家畜と人が同じ空間の中で生活していたこと。寒さや盗難から家畜を守るため、また家畜自体の熱で暖をとるためなどの理由があったそうですが、こうした生活の様子が生き生きと感じられます。

グロッタの家(Storica Casa Grotta)
住所:Vicinato di vico Solitario, 11, 75100 Matera
電話番号:(+39) 0835-310118
営業時間:9:30〜20:00(定休なし)

巨大な岩塊をくり抜いた「サンタ・マリア・デ・イドリス教会」

ドゥオモの南側に広がるサッソ・カヴェオーソ地区で、ひときわ目立つ巨大な石灰岩の塊。それをくり抜いて作られたのが「サンタ・マリア・デ・イドリス教会」です。

前情報がないと教会とは思えない、ユニークな外見
前情報がないと教会とは思えない、ユニークな外見

内部はいかにも洞窟といった無骨な作りですが、11〜13世紀頃に描かれたフレスコ画が並んでおり、信仰の場であったことがうかがえます。残念ながら内部の撮影は禁止されているため、ぜひご自身の目で確かめてみてください。

サンタ・マリア・デ・イドリス教会(Chiesa di Santa Maria di Idris)
住所:Via Madonna dell’Idris, 75100 Matera
電話番号:(+39) 397-9803776
営業時間:夏季(4月1日〜11月1日)10:00〜19:00、冬季(11月2日〜3月31日)10:00〜14:00(定休なし)
入場料:3ユーロ

重要なフレスコ画が描かれた「サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会」

グラヴィーナ渓谷に面した高台に位置する「サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会」。こちらもマテーラを代表する岩窟教会の一つで、9世紀頃に建設され、1283年までベネディクト派の修道院付属の教会として使われていました。

教会の入口、看板がないため見落としには十分注意を
教会の入口、看板がないため見落としには十分注意を

入口はそっけないものの内部は洞窟と思えないほど広く、「授乳の聖母」や「聖グレゴリウス」など歴史的にも重要なフレスコ画が描かれています。こちらもサンタ・マリア・デ・イドリス教会と同様、内部の写真撮影が禁止されているので注意しておきましょう。

サンタ・ルチア・アッレ・マルヴェ教会(Chiesa di Santa Maria di Idris)
住所:Rione Malve, 75100 Matera
電話番号:(+39) 327-9803776
営業時間:夏季(4月1日〜11月1日)10:00〜19:00、冬季(11月2日〜3月31日)10:00〜14:00(定休なし)
入場料:3ユーロ

マテーラは絶景の宝庫、おすすめの撮影スポットはどこ?

マテーラは坂道や階段が多い街です。そのため高低差が激しく、サッシの街並みやグラヴィーナ渓谷が見渡せる絶景スポットが多いのが特徴。街歩きの際は、ぜひカメラを片手にお出かけしてみてください。ここではその中でも、特におすすめしたい撮影スポットをご紹介します。

ドゥオモ広場前のパノラマ

洞窟住居の全体像をカメラに収めたいなら、まずはドゥオモ(大聖堂)に行ってみましょう。街一番の高台にあるため、その前の広場は街並み全体が見渡せる絶景スポットとして多くの人々が集まる場所です。坂道や階段が多いため道のりは少し大変ですが、高台から見える街並みはそんな疲れを吹き飛ばしてくれます。

街全体が見渡せる最高のロケーション
街全体が見渡せる最高のロケーション

サンタ・マリア・デ・イドリス教会の裏側

サッシの街並みだけでなく、その裏側に広がるグラヴィーナ渓谷の写真も撮ってみたい。そんな時は見どころとしてもご紹介したサンタ・マリア・デ・イドリス教会がおすすめ。教会の裏側はちょっとした高台になっていて、ダイナミックで迫力のある断崖絶壁の姿を見ることができます。

危険な場所ではありませんが、ゴツゴツとした岩肌が露出しているのでスニーカなど歩きやすい靴を履いていくことをおすすめします。

断崖絶壁の反対側にはサッシの街並みも広がっている
断崖絶壁の反対側にはサッシの街並みも広がっている

ランフランキ宮殿そばのパスコリ広場

せっかくマテーラにいるのだから、洞窟住居とグラヴィーナ渓谷の両方を1枚の絵に収めてみたい。そんな欲張りな写真をお望みの方は、いったんサッシの街並みを出て、新市街地にあるランフランキ宮殿まで足を運んでみましょう。建物の向かって左側にあるパスコリ広場(Piazzetta Pascoli)にはパノラマテラスがあり、左側にサッシの街並み、右側にはグラヴィーナ渓谷を見渡すことができます。

「広場」という名前ですが、展望台のような雰囲気です
「広場」という名前ですが、展望台のような雰囲気です

小さな広場なので見逃しには十分ご注意を。多くの人がスマホやカメラを構えて写真を撮っているので、それを目印にするといいでしょう。

マテーラに来たら食べておきたい、名物グルメってどんなもの?

食べることは旅行の楽しみのひとつ。マテーラに来たらぜひ食べておきたい名物をご紹介しましょう。

バジリカータ州の名物パスタ「カヴァテッリ」

イタリアといえばパスタ。イタリアにはどこに行ってもその地方を代表するパスタがありますが、マテーラのあるバジリカータ州の名物といえばこのカヴァテッリです。溝を掘るという意味の「カヴァーレ(cavare)」という言葉が語源で、その名前の通りクルンと丸まったパスタの中央には一筋の溝があり、ここにパスタソースがしっかりからみます。

弾力のあるもちもちとした食感は日本人の好みの味
弾力のあるもちもちとした食感は日本人の好みの味

シンプルなトマトソースのほか、同じくこの地方の名産であるサルシッチャ(生ソーセージ)と和えることもあります。コース料理のプリモ(一皿目)としても、ランチに一皿だけさっといただくのもおすすめです。

肉の風味が濃厚な「サルシッチャ」

丘陵や山岳地帯の多いバジリカータ州は、もともと羊や山羊の放牧が盛んな土地です。そのため、家畜の肉や乳を利用したチーズやソーセージ作りの伝統があります。中でも有名なのがこのサルシッチャで、パスタソースの具にしたり、煮込み料理に入れたりとさまざまな方法で食べられます。

サルシッチャのグリルはどのレストランでも見かける定番の一品
サルシッチャのグリルはどのレストランでも見かける定番の一品

どの食べ方もとても美味しいですが、肉の風味をしっかりと感じたいならやはりおすすめシンプルなグリル。同じくこの地方の名産である唐辛子が入っていることもあるので、辛いものが苦手な方は注文前に確認しておきましょう。

マテーラの名物をふんだんに使った「チャレッダ」

実はマテーラには、カヴァテッリよりもサルシッチャよりも有名な食べ物があります。それはなんとパンなんです。

驚く人もいるかもしれませんが、マテーラのパンはイタリアのIGP(特産品保護指定)認定を受けた名産品。硬い外皮の中にはしっとりもちもちとした生地が詰まっており、街の外から買いに来る人がいるほどなのです。

:いかにもヨーロッパのパンといった無骨な外見
いかにもヨーロッパのパンといった無骨な外見

そんなマテーラのパンをふんだんに使ったのが「チャレッダ」というパンサラダ。さっぱりとしていて、街中を歩き疲れたあとでもすっと体にしみわたる優しい味わいです。

サラダとはいえ、しっかりお腹にたまります
サラダとはいえ、しっかりお腹にたまります

もちろん、名物であるパンをそのまま食べてもとても美味しいので、マテーラでパン屋さんを見かけたらぜひ試してみてください。1週間ほどなら日持ちするので、お土産にもおすすめです。

サッシの独特の雰囲気に浸れる場所

マテーラの街中には観光客向けのホテルやレストランも整備されていますが、他の観光地と比べてツーリスティックになりすぎず、かつ物価もそれほど高くないのも旅行者にとっては嬉しいポイント。サッシがもつ独特な雰囲気も色濃く残されていて、「ちょうどいい」具合で楽しめる場所です。南イタリアを旅行する機会があれば、ぜひマテーラを検討してみてくださいね。