世界中で一番世界遺産登録の多い国、イタリア。その中でさらに、一番世界遺産登録の多い州はどこかご存知ですか?実はミラノのあるロンバルディア州なのです。フィレンツェやローマは町ごと世界遺産として1カウントなので、厳密に比較するのは難しいですが、細かい話を抜きにしても北部はイタリアを代表する世界遺産の宝庫だと言えるでしょう。

歴史とモードが共存する町「ミラノ」

ミラノ

皆さんはミラノにどんなイメージを持っていますか?ミラノコレクションや家具の見本市のミラノサローネなど流行の発信地という印象でしょうか。それとも、最後の晩餐やスカラ座など歴史ある芸術の都でしょうか。金融や外資系企業のオフィスなどイタリア経済の要でしょうか。

ミラノ


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それらのイメージ全てが正解です。ミラノは実に多彩な顔を持つ町なのです。ミラノは首都ローマに次ぐ国内2番目の都市で、イタリアの商業、工業そして金融の中心地です。また、ゴシック調のドゥオーモやガッレリア(アーケード)、スカラ座、スフォルツェスコ城そして最後の晩餐のあるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会など観光名所も枚挙にいとまがありません。展示会や見本市などファッション・デザインの聖地とも言われており、ミラノコレクションやミラノサローネの時期にはトップブランド、一流メーカーが集うほか、セレクトショップの「ディエチ・コルソ・コモ(10corso como)」には世界各国のトップスタイリストたちも頻繁に訪れます。

「最後の晩餐」のサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会エリアを、丸一日ディープに楽しもう!

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会


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サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会は、ミラノ中央駅から見て南西へ4kmほど進んだカドルナ駅の近くにあります。中央駅近辺やドゥオーモ周辺とはまた違う魅力を持つこのエリアについてご紹介していきます。

知っているとより楽しめる!世界遺産「最後の晩餐」と、レオナルド・ダ・ヴィンチの基本をおさらい

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会


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レオナルド・ダ・ヴィンチは、イタリアのルネッサンス期を代表する芸術家です。偉大なる画家であると同時に、建築や数学、天文学、地質学、力学、光学、人体生理学など幅広い学問に精通していた学者でもありました。ダ・ヴィンチは、15世紀半ばにメディチ家が支配するトスカーナ地方のヴィンチ村で誕生。名前の「ヴィンチ」というのはこの出身地のことで、「ヴィンチ村出身のレオナルド」というのが彼の本名です。

14歳の時に当時のフィレンツェでも抜きん出て優れていた工房のヴェロッキオ工房に弟子入りし、絵画や彫刻、そして設計や金属加工、機械工学、土木など様々な知識や理論を吸収し才能を伸ばしていきました。ダ・ヴィンチが生み出した名画は数多くありますが、その中でもトップ3と言われているのが、30代半ば頃の作品「ウィトルウィウス的人体図」、50代の頃の作品でルーヴル美術館の代名詞的作品の「モナ・リザ」、そして40代半ば頃の作品「最後の晩餐」です。「最後の晩餐」のすごいところは、世界遺産の正式な登録名称に作者そして作品名がしっかりと明記されている点。登録名称は、「レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』があるサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会とドメニコ会修道院」です。

名画「最後の晩餐」は、サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会の食堂の壁画として描かれました。食堂という、人が出入りして料理の煙が立ち込める空間だったことや、長期保存には向かないテンペラ技法で描かれていることにより、残念ながら絵画の損傷が激しく、何度も修復が繰り返されてきました。ダン・ブラウンの小説及び映画の「ダ・ヴィンチコード」のストーリーの要にもなっていて、真偽のほどはわかりませんが様々な憶測や都市伝説があります。それぞれの弟子の手のポーズには意味が隠されているという話や、中央のイエス・キリストは、本当はお腹を隠したマグダラのマリアがモデルだという説もあります。この世界的な名画を鑑賞する際は、想像力を働かせてレオナルド・ダ・ヴィンチが我々に伝えようとしているメッセージを読み解く気分で鑑賞してみても面白いでしょう。

最後の晩餐を楽しむ為に押さえておきたい3つのポイント

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会


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「せっかく名画を見に行くなら心ゆくまで楽しみたい!」そんな人のために事前に押さえておきたい情報をご紹介します。最初のポイントは、鑑賞は完全予約制で日時厳守だということです。教会の入り口には「当日券余っていたら譲ってください」というボードを持った人も見られるほどなので、あらかじめ予約しておきましょう。2番目のポイントは、最後の晩餐にたどり着くまでには時間がかかるということ。時間になると15名程のグループに分けられ、英語ガイドさんの案内のもと、オートロックのセキュリティドアを3〜4回くぐらないと最後の晩餐とは対面できません。3つ目のポイントは、鑑賞時間は15分程度の総入替え制になっているということ。後から「もっと見たかった…」と後悔しないために、見るべきポイントを予習したり決めておいたりするとよいでしょう。

一方、長い間写真撮影厳禁だったのですが、2015年12月より再び写真撮影が可能となりました。ただ、ルールがコロコロ変わるのがイタリア式なので、いつまたNGになるかわかりません。当日のガイドさんからの説明をよく聞くようにしてください。

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会(Chiesa di Santa Maria delle Grazie)
開館時間:8:15〜19:30(日曜は18時まで)
休業日:月曜
料金:12ユーロ(日本語のオーディオガイドは別途3.5ユーロ)
住所:Piazza Santa Maria Delle Grazie 2, Carso Magenta Milan, 20123, Italia

教会近くのエリアを散策してグルメ・アート・歴史を贅沢に満喫!

最後の晩餐を堪能して、もっとダ・ヴィンチについて知りたくなったという人にオススメなのが最後の晩餐のある教会から徒歩5分の距離にある「ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館」です。ダ・ヴィンチの生誕500周年を記念して作られた博物館は科学的思考や工業技術の発展がテーマの3つの建物となっています。この建物自体は世界遺産ではありませんが、画家であり研究者でもあったダ・ヴィンチの才能に触れることができるオススメの施設です。

ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館
開館時間:9:30〜17:00(土・日曜は18:30まで)
休業日:月曜
料金:10ユーロ
住所:Via San Vittore, 21, 20123 Milano MI, Italia

この博物館から20分ほどゆっくり南方向へ向かって歩いて行くと、運河があります。ナヴィッリョ運河といい、ジブリ作品の「紅の豚」のモデルとなったエリアです。運河沿いにはおしゃれなオープンテラスのカフェが軒を連ね、月に何度かメルカート(市場)が立ち、川沿いが大変賑います。お天気が良ければ、フォトジェニックなナヴィッリョ運河エリアへもぜひ足を運んでみてください。また、お腹が空いたら、「オフィチーナ12(Officina12)」というレストランがオススメ!前菜盛り合わせはハムとチーズが合計7種てんこ盛りです。12ユーロとお手ごろ価格なので、ぜひワインと一緒に味わってみてくださいね。

オフィチーナ12(Officina12)
営業時間:ランチタイム12:00-15:00(月曜はランチなし)、ディナータイム19:00-24:00
定休日:なし
住所:Alzaia Naviglio Grande, 12, Milano

小旅行気分で楽しむ、ミラノ近郊の世界遺産

ミラノ市内から少し足を伸ばすだけで、大自然に囲まれた世界遺産がいくつもあります。ショッピングもいいけれど、ピクニックのような小旅行を楽しみつつ世界遺産を満喫する旅に出掛けてみませんか?

その歴史はジュラ紀以前!三畳紀の地球を今に伝えるサン・ジョルジョ山

スイスとイタリアの国境となっているサン・ジョルジョ山は、今から2億3000万〜2億4500万年前の三畳紀中期の化石が多く発掘される貴重な山です。サン・ジョルジョ山自体はスイス国内にあるので、2003年にスイスの世界遺産として登録されました。その後、地層上は繋がっているイタリアのベザーノ一帯でも化石を含む岩石が出土していること、そもそもの発見の歴史を辿るとイタリア領内での発見が先だったことなどから2010年にスイスとイタリア両国の世界遺産となりました。現在は、化石発掘調査には厳格なルールが定められており、大学などの専門的な研究機関以外の発掘は認められていません。

サン・ジョルジョ山への行き方:
ミラノ ポルタ ガリバルディ駅から1時間45分程度、片道6.7ユーロ
トレノルド(Trenord)という私鉄でポルタ ガリバルディ駅〜ヴァレーゼ駅(1時間程度)
ヴァレーゼ駅からバスで終点のポルトチェレジオまで(45分程度)

古代文明よりも遥か以前の人間の営みがわかるヴァルカモニカの岩絵群

ヴァルカモニカの岩絵群

ポー川の支流の一つであるオーリオ川沿いに、約70kmにわたって続く渓谷がヴァルカモニカ。この渓谷の岩には、人の手によって彫られた絵や文字があります。それらは約1万年前に彫られたと推測されているものから、ローマ帝国時代のアルファベットの彫られた岩まで、時の隔たりは実に8000年ほど!当時の農耕や祭りなど文化・風習がうかがえるものから地図のようなものまで、線刻画のデザインはとても幅広く見ていて飽きません。また、エリア一帯は国立公園となって整備されているので、ミラノを出る際にパニーノとコーヒーを調達すれば、ピクニック気分も楽しめます。

ヴァルカモニカの岩絵群

ヴァルカモニカの岩絵群への行き方:
ミラノ 中央駅から2時間30分程度、片道11.5ユーロ
トレノルド(Trenord)という私鉄でミラノ中央駅〜ブレーシァ駅(1時間程度)
ブレーシァ駅からトレノルドのエドーロ行きに乗り換えブレーノ駅まで(1時間30分程度)
※ブレーシァ駅で30分程度乗り換え時間があることが多いです。

信仰する心が生み出した山中の町、ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ

サクロ・モンテ(聖なる山

世界遺産登録の正式名称サクリ・モンティは、サクロ・モンテ(聖なる山)の複数形を表します。世界遺産には9つのサクロ・モンテが登録されており、内訳はピエモンテ州が7つ、ロンバルディア州が2つです。15〜16世紀当時、キリスト教の聖地であるエルサレムはイスラム勢力に支配されており、キリスト教修道士や信者たちによる聖地巡礼はほぼ不可能な状態にありました。そんな中、聖地巡礼の代替として始まったと言われているのがサクロ・モンテの造営です。つまり聖地巡礼を疑似体験するための大規模な宗教施設だと考えるとわかりやすいですね。9つ登録された中でも一番規模が大きいのは、ピエモンテ州のヴァラッロという山のサクロ・モンテで、実に45つもの教会がメインストリート沿いにひしめいています。

サクリ・モンティへの行き方:
ミラノ中央駅から2時間30分程度(10ユーロ程度)
ミラノ中央駅から国鉄(トリノ ポルタ ヌォヴァ行き)でヴェルチェッリ駅まで(1時間程度)
ヴェルチェッリ駅から50番バス乗車(1時間30分程度)

クレスピが目指した労働者たちの理想郷

クレスピ家

クレスピ家は19世紀のロンバルディア州屈指の事業家でした。綿織り物工場を生業としていたクレスピ家は、アッダ川岸に建設した工場の近くに学校や病院、公衆浴場など労働者が快適に暮らせるような「労働者のための理想郷」を建設しました。

クレスピ家

これは、クレスピ家が工員を奴隷のように単なる労働力として扱うのではなく、ゆりかごから墓場まで家族もろとも面倒を見る対象として扱っていた気持ちの表れです。ここでは、子供の学校の授業料や給食費から病院の診察代、ひいては公衆浴場の入湯料まで全て会社負担で、工員は全ての福利厚生サービスを無料で享受することができました。まさに「労働者の理想郷」という言葉がぴったりですね。見所は、ずらりと立ち並ぶ工場部分と、教会の内部です。

労働者のための理想郷への行き方:
地下鉄M2Gessate駅よりタクシーで20分程度

 

いかがでしたか?ミラノ市内だけではなく、電車に乗って小旅行気分で行ける世界遺産の数々をご紹介しました。今までの旅行ではなかなか足を伸ばしたことがなかったエリアも、世界遺産を見に行くという目的があれば、最初の一歩を踏み出しやすいのではないでしょうか。ぜひ、小旅行エリアまで足を伸ばして、まだ見たことのない北イタリアの魅力に触れてみてくださいね。

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文・写真/鈴木(明)
Cover photo by Tourism Media