投稿者 : 古谷 未来、投稿日 2019 年 11月2日

ビーチリゾートを満喫するための紫外線対策

白い砂浜や青い海で遊び、プールサイドでのんびり日光浴、照りつける太陽のまぶしさも心地よい。ビーチリゾートで過ごす休日はじつに魅力的です。ただし気をつけたいのはビーチとその周辺に降り注ぐ大量の紫外線。皆さん、ビーチリゾートに出かけるときの紫外線対策ってどうしていますか? 実際にビーチリゾートに出かけた自身の体験も含め、紫外線とその対策にまつわるあれこれを改めて考えてみました。

日焼けが怖いけどビーチリゾートに行きたい

まず簡単に私自身のスペックを。目の色が薄めでまぶしさが苦手、のぼせやすく汗かきですぐ熱中症になる、日光を長く浴びると真っ赤になって腫れる、虫に刺されやすい、といったところです。この体質のおかげで、幼い頃から臨海学校に水上公園、島でのゼミ合宿と数々の場において文字通り痛い目に遭ってきました。もう海や山に行くのやめれば、思いますか?私もちょっと思います。でも素敵なリゾートホテルステイには憧れるし、できることなら海やビーチでも気軽に遊びたいのです。日焼けと熱中症が怖いだけで。このジレンマたるや。そんなこんなで逡巡しているうちに、なんと仕事で南の島のビーチリゾートを訪れる機会が。果たしてどんな対策をすれば、紫外線から自らを守り無事に帰ってこられるのか、真剣に考えるときがやってきたのです。

紫外線はなぜいけない?

紫外線についておさらいです。紫外線(UV)は、波長領域の長さによって、A、B、Cの3つに分けられます。うちUV-Cは上空のオゾン層や酸素分子で完全に吸収され、地上には届きません。UV-Bは一部がオゾン層で吸収されて残りが地上に届きます。このUV-Bが健康に悪影響を及ぼすとされます。UV-Aは有害度はそれほどでもありませんが、長年浴び続けることによって健康被害が出るといわれています。

具体的に紫外線を大量に浴びて起きる症状というと、急性のものが日焼け。日焼けとは皮膚が赤く炎症を起こすこと、その後色素が沈着して色が濃くなることを指します。本来持っている皮膚タイプにも関係し、日光に長く当たっても全く変化がないという人もいます。しかし、いわゆる日焼けの症状が顕著ではないからといって、紫外線の影響を受けていないわけではありません。長年紫外線を浴びた蓄積によって、美容面ではシワやシミ、ホクロ、髪のダメージの原因となり、健康面では白内障や皮膚ガンのリスクを高めることが指摘されています。

残念ながら、紫外線を吸収するオゾン層の破壊などが進み、地上に届く紫外線の量は年々増えているといわれ、私たちは日常的にもその影響を受けやすくなっています。

ビーチリゾートのベストシーズン時の紫外線は最強説

地上に届く紫外線の量は、太陽高度やオゾン量、雲の状態など複合的な要因によって決まりますが、大きく影響するのは太陽高度。ざっくりいうと、この高度が高いと、地上に届くまでに紫外線を吸収してくれるクッション要素が減って紫外線量が増えます。太陽高度は、地域でいうと低緯度地域、1年の中では夏、とくに夏至前後、1日の中では正午前後の4時間ほどがもっとも高くなるといわれています。

さらに紫外線は反射散乱しやすいという性質を持っています。じっさいに私たちが浴びる紫外線は、地表面に当たって反射されるものも多く、この反射率は、土や草地では直射光の10%弱、アスファルトで約10%、水面で10~20%、砂浜で10~25%、新雪では80%となっています。

さて、人気のビーチリゾートを例にすると、フィリピンのセブ島は北緯10度、インドネシアのバリ島は南緯8度、ミクロネシアのパラオは北緯7度と、いずれも赤道付近の低緯度地域に点在しています。つまりこれらのビーチリゾートのベストシーズン、とくに晴天の日中の砂浜という状況は、紫外線量が最大になる条件を十分すぎるほど備えているわけです。

ビーチやプールサイドを避けるべき時間帯は

とはいえ、オフシーズンの夕方を選んでビーチやプールサイドに行くというのは、ビーチリゾートでの過ごし方としては非現実的です。そこで覚えておきたいのは、ビーチやプールサイドを避けるべき時間帯。太陽が最も高い正午前後、その前後の10時~14時の時間帯は、屋内で過ごしておくのが無難。海で遊ぶのは、早朝から午前中早い時間、または午後遅めの時間がよいでしょう。

スパやホテル内でゆっくり過ごすリラックスタイムに、あるいは日陰が用意されたビーチ近くのカフェやバーでチルタイムにするのがよさそうです。

紫外線対策の基本「4S」とは?

具体的にはどのように紫外線対策を取るのが効果的なのでしょうか?とくにオゾン層が薄い地域で、皮膚ガンの発生率の高いオーストラリアでの対策が参考になります。オーストラリアでは、1980年代という早い段階から、紫外線による健康被害予防のための「サン・スマート(Sun Smart)」プログラムを展開しており、国民、とくに子供に対し積極的な啓蒙活動を行っています。それによると、子供が屋外に出るときの具体的なアクションとして『スリップ・スロップ・スラップ・ラップ(Slip, Slop, Slap, Wrap)』が挙げられています。

スリップ:長そでのシャツを着よう!(Slip on a long sleeved shirt!)
スロップ:日焼け止めを塗ろう!(Slop on some sunblock!)
スラップ:帽子をかぶろう! (Slap on a hat that will shade your neck!)
ラップ :サングラスをかけよう!(Wrap on some sunglasses!)

とりあえず紫外線の4Sと覚えておくことにしましょう。大切なのは、これらを合わせて行うことです。とくに眼に関しては、帽子とサングラスをあわせることで、目に届く紫外線量を98%カットできるといわれています。

ビーチリゾートに持って行く紫外線対策グッズとその選び方

4Sに沿えば、長袖、帽子、サングラス、日焼け止め。この4つのグッズが紫外線対策にはマストですね。これらのグッズの選び方や使い方をご紹介します。

何はともあれサングラス

まず、サングラスは日常生活でも取り入れやすいもののひとつ。手に取りやすく持ち歩きやすく、汗をかいても効果が変わらないのが嬉しいところ。かけっぱなしのスタイルも、ビジネスシーンならともかくビーチリゾートではマナー的に失礼にあたりません。首にかけられるストラップをつけておくと置き忘れを防げてよいかも。
国内で販売しているUVカット機能を備えたものには「紫外線透過率」が表示されています。この数字が低いものほど紫外線を通す量が少なくなります。

頭と首を守る帽子(と巻きもの)

頭上に届く紫外線を遮るのは帽子。4Sの説明では、頭と頭皮、さらに首、顔を覆うようつばが広めのものが適しているとあります。
ただデザインにもよりますが、広いつばがうねった麦わら帽子は、マダム感に相応の品格がないからか、私にはまったく似合いませんでした。といって保育園児がかぶっている首の後ろだけ長くなった帽子もファッション的に受け入れがたい。そこで街仕様の折りたためるサファリ風ハットを愛用しました。

帽子のつばで首が隠せないぶん、シート状の保冷剤を首の後ろに貼って、アウトドアショップで売られている速乾性タオルを首にかけておきます。私の場合汗かきなので速乾タオルを使いますが、そこまででもない方は麻や綿、シルクなどのストールをさらっと首に巻いておけばよいと思います。この方法は熱中症対策にもかなり効果的。首の後ろは太い血管が通っているので、ここが熱せられると一気に暑さを感じますし、冷やす際もここを冷やせば一気に体感温度を下げられます。日焼け止めの塗り残しが多いといわれている箇所でもあるので、何かしらで紫外線を遮ることが大切です。ぜひ首に何かひと巻きしておいてください。石田純一か中尾彬になった気持ちで。

長袖はどんなものを選ぶ?

現地で見ていると、日本国内でもよく目にする、Tシャツの下に腕だけラッシュガードなど「一部だけグッズ使い」は相当浮くスタイル。スポーティなラッシュガードの上に何か羽織るか、ゆったりした長めのシャツなど、最初から長袖仕様のファッションにしておいたほうが合う気がします。

ここ数年で一気に市民権を得てきたラッシュガード。もともとはサーファーが擦り傷(※サーフィン用語でラッシュ)予防のために着ていたウェア。それにUV遮断加工をしたものを水着として使用する人が増えました。現在では水着の上から羽織れる洋服仕様のものなど多種多様なラッシュガードが登場しています。パーカ仕様のものであれば、かぶれば頭や首の後ろを守ることができるので一枚持っておくと便利です。

UVカット加工の製品は、某量販店をはじめ広く出回っているのでお好みのものを。私自身はあまりハイテクな化学繊維は肌触りがいまひとつ、またビーチ感のなさがテンションを下げるので、多少日差しを通しやすいものの、麻や綿の自然素材を選びました。そのかわり、重ね着部分にならない上腕、首から肩にかけては服の下にも日焼け止めを朝のうちに塗っておくことに。

UVカットの繊維製品は製法にも注意する

帽子やラッシュガードなど、現在流通しているUVカット製品は、大きく2つの方法で作られています。

1)繊維に紫外線を反射する微粒子を織り込んで加工する
2)生地に紫外線を吸収する薬剤を染み込ませて加工する

2)については、衣服や帽子などの製品加工がされたのちに、紫外線吸収剤を塗っているものも含まれます。2)の場合、表面に塗られているだけですから、刺激や水などの影響で取れていってしまいUV遮断効果は薄れます。また2)で使用される紫外線吸収剤は、後述しますが、人体、環境に影響を与える可能性が指摘される成分を含みます。紫外線遮断効果の高いものという意味でも環境負荷を減らすという意味でも、1)の製法で作られているかどうかも気にしてみてください。

日焼け止めをいつ、どれくらい塗るか

各メーカーの注意書きでは、SPFの高さや防水性によらず、2〜3時間に一度塗り直すことが推奨されています。日焼け止めを持ち歩いてこまめに塗り直すしか方法はありませんが、タイミングとしてちょうどいいのはトイレに行く時です。手を洗うついでに、手の届きやすい首まわり、手、腕周辺を塗るとよいでしょう。メイクをしていない場合は顔にも。

塗る際は、すりこむように塗るのではなく、膜を作るような感覚でのばしていくのがポイント。私が使ったのはオーガニックブランドからココナッツオイル配合の固形製品です。じつは塗りやすい水っぽいテクスチャの製品も持参したのですが、こちらはつけても汗で速攻流れることが到着早々に判明。固形製品を手にとってペタペタと肌の上から押さえるようにつけていったほうが、肌止まりがよかったです。

海と体に優しい日焼け止め

市場に流通している日焼け止めの主要成分には「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」があり、これらのどちらか、あるいは組み合わせで製品が作られています。これまでは紫外線吸収剤を使った日焼け止めが主流でしたが、今後はその流れが変わりそうです。きっかけは、アメリカ・ハワイ州で、吸収剤に使われる「オキシベンゾン(oxybenzone)」と「オクチノキサート(octinoxate)という成分が含まれる日焼け止めの販売と流通が禁止される法案が2018年に成立したこと。2つの成分は、生育中の赤ちゃんサンゴを変形させ死滅させてしまうほか、今あるサンゴの白化にも大きな影響を与えていることが明らかになったのです。

指定成分のうち、オキシベンゾンは体内に吸収されやすく環境ホルモン蓄積の疑いがあるため、すでに日本国内ではほとんど使用がなされていない状況。一方、オクチノキサートは、日本ではメトキシケイヒ酸オクチル(あるいはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル)と表示され、吸収剤に使われる成分としては最もポピュラーです。人体への安全性は比較的高いのですが、サンゴにはNG。

ではどういうものを選べばいいの?「紫外線吸収剤不使用」と表示されているか、主成分が天然成分か、あるいは「紫外線散乱剤」を使用しているか、が基準になります。紫外線散乱剤とはその名の通り粉状の散乱剤によって紫外線を皮膚上で反射散乱させるもの。散乱剤に使われる酸化チタン、酸化亜鉛は生分解性がある(海や川に流れた時に微生物が分解してくれる)とされています。

天然成分、紫外線散乱剤を使用した日焼け止めは、オーガニックコスメのメーカー、敏感肌用のコスメを作っているメーカーで見つけやすいです。これらのメーカーは環境に配慮した製品作りを心掛けているところも多いので、そうした部分もチェックしておくとよいかも。

日焼けその後に

十全の対策をしたつもりでも、うっかり日焼けというのはどうしても起こります。1日の最後に紫外線を浴びた肌の手当てを忘れないようにしましょう。紫外線を浴びた後のケアとしては、まず冷やして炎症を抑え、そののちに保湿を行うというのが王道です。日焼けというのは軽いやけどのようなもの。日焼け後にいきなり強い成分の入ったホワイトニングコスメを使うのは刺激が強すぎ逆効果。まずは熱を持った炎症状態を鎮静させるのが最優先です。

私は滞在中、ホテルに戻った後は、バスタブに水を張り、そこでゆっくり体を冷やしました。水シャワーだとホテルによっては水圧が強すぎ肌がびっくりするので。また、鎮静効果の高い成分を使ったマスクシートを冷蔵庫で冷やしておき、それを当てるのも効果的でした。

紫外線対策の落とし穴

ズボラな私にしては念入りな対策をとったおかげか、ありがたいことに赤く腫れることもなく無事帰国したのですが、唯一落とし穴が。サンダル履きで過ごし足元はサンダルばきにしたのですが、帰国後よく見ると、くるぶしから下、とくに足の甲だけくっきり色が変わっていたんです!おそらくビーチ周辺で水に触れるたびに日焼け止めが落ちていたのだと思われます。また足の甲は赤く腫れたりすることもなく、ちょっと冷やしただけで落ち着いたので、あまり気にせずそのままにしておいたのもあります。そのぶん沈着が早かったということなのでしょう。

日焼け止めを塗りやすい=手の届きやすい場所と反比例するところが日焼けしやすいということを実証してしまいました。忘れがちな箇所として首の後ろと並んで、要注意なのが足の甲。今後のためにメモ。

世界のビーチで日焼け止めの規制が続いている

最後に日焼け止めの規制について現状をお伝えすると、ハワイ州の法令に続き、世界各地のビーチリゾートで同様の動きが広がっています。パラオ、カリブ海のオランダ領ボネール、アメリカ・フロリダ州のキーウェストビーチでも禁止法令が成立。法令化はされていないもののメキシコ・カンクンの南にある、シェルハ自然保護区やその周辺のリゾートでは生分解性の日焼け止めを使うよう呼び掛けています。パラオの場合、指定の成分が10種類もあり、販売・流通だけでなく使用も禁止するいわば全面的な規制。販売者に対しては罰則も設けられているなど、かなり厳格なものになっています。

こうした流れは、今後他のビーチでも一般的になっていくものと思われます。自分の紫外線対策とともに、海のためにできる対策も覚えておきたいですね。

それでは世界のビーチリゾートでの休日をお考えの皆さん、適切な紫外線対策をして楽しいリゾートステイをお過ごしください!そしてビーチと海と自分の健康を守っていきましょう。


【参考】
気象庁「オゾン層・紫外線の知識」.https://www.data.jma.go.jp/gmd/env/ozonehp/3-0ozone.html
環境省「紫外線環境保健マニュアル 2015」.https://www.env.go.jp/chemi/matsigaisen2015/full/matsigaisen2015_full.pdf
日本皮膚科学会「皮膚科Q&A・日焼け」.https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/index.html
世界保健機関(WHO)「各地のUVインデックス」.https://www.who.int/uv/intersunprogramme/activities/uv_index/en/index3.html
在日オーストラリア大使館「サンスマートプログラム」.https://japan.embassy.gov.au/tkyojapanese/aust_sunsmart.html
日本化学繊維協会「遮熱・UVカット」.https://www.jcfa.gr.jp/about_kasen/katsuyaku/10.html